傷痕は運命の赤い糸
話が思わぬ方向に進んでいきそうな気配がしたとき、「キャー」と女性の悲鳴が聞こえた。
反射的に駆け出した紗世の腕を、賢人が掴んだ。
「俺が様子を見てくる。紗世はここにいてくれ」
「でも——」
「頼むから! もう危険なことに首を突っ込まないでくれ」
あまりにも切実な訴えに、それでもついて行くとは言えなかった。
「……わかった」
ほっとした様子の賢人に、それでも言いたいことがあった。
「その代わり、戻ってきたらちゃんと話して。どうして過剰に私を心配するのかを。本当の理由があるんでしょ……?」
自分の時間を割いてまで、警察官がたったひとりを護衛するのは、やっぱりおかしい。「好きだから」なんて、全部を間に受けることはできない。
ここにいてくれと紗世を引き止めるのも、おそらく好意とは全く関係ない。
僅かに瞳を揺らして、けれど力強く頷いて「約束する」と賢人が駆け出して行った。念を押すように「絶対にそこから動くなよ」と紗世に言い置いて。
走り出した賢人の背中は、あっという間に見えなくなった。
あんなふうに長い足があれば。しなやかな筋肉を維持できる体だったら。いっそ男だっら、もっと強い自分になれていたかな。なんて不毛なことを考えながら、見えなくなった背中を尚も視線で追いかけていた。
そこから動くなと注意されていなくても、動くつもりはなかった。
叫んだ女性に何があったのか気になるし、何よりも賢人が無事かどうか心配で、そのまま帰るなんてできないから。
ここで待っているつもりだった。
けれど、賢人の背中が見えなくなってすぐに、背後から何者かが迫ってきた。気配に気が付き、振り返って抵抗したが時すでに遅し。何者かの手によって、紗世の視界は真っ暗になった。
反射的に駆け出した紗世の腕を、賢人が掴んだ。
「俺が様子を見てくる。紗世はここにいてくれ」
「でも——」
「頼むから! もう危険なことに首を突っ込まないでくれ」
あまりにも切実な訴えに、それでもついて行くとは言えなかった。
「……わかった」
ほっとした様子の賢人に、それでも言いたいことがあった。
「その代わり、戻ってきたらちゃんと話して。どうして過剰に私を心配するのかを。本当の理由があるんでしょ……?」
自分の時間を割いてまで、警察官がたったひとりを護衛するのは、やっぱりおかしい。「好きだから」なんて、全部を間に受けることはできない。
ここにいてくれと紗世を引き止めるのも、おそらく好意とは全く関係ない。
僅かに瞳を揺らして、けれど力強く頷いて「約束する」と賢人が駆け出して行った。念を押すように「絶対にそこから動くなよ」と紗世に言い置いて。
走り出した賢人の背中は、あっという間に見えなくなった。
あんなふうに長い足があれば。しなやかな筋肉を維持できる体だったら。いっそ男だっら、もっと強い自分になれていたかな。なんて不毛なことを考えながら、見えなくなった背中を尚も視線で追いかけていた。
そこから動くなと注意されていなくても、動くつもりはなかった。
叫んだ女性に何があったのか気になるし、何よりも賢人が無事かどうか心配で、そのまま帰るなんてできないから。
ここで待っているつもりだった。
けれど、賢人の背中が見えなくなってすぐに、背後から何者かが迫ってきた。気配に気が付き、振り返って抵抗したが時すでに遅し。何者かの手によって、紗世の視界は真っ暗になった。