俺の彼女は高校教師
第1章 美和
県立隆縄高校に入学して2年が過ぎた。 相変わらず俺は帰宅部で授業が終わるとさっさと教室を飛び出して帰っちまう。
仲のいいやつも居るには居るんだが普段は教室でちょっと話をするだけ。 生徒会にも関わってないからクラスの連中には役立たずだと思われている。
勉強だって水面下でウロウロしているだけ。 いいとも悪いとも言えない。
ただ授業中は寝ることも無くよそ見をすることも無く教師の話を飽きもせずに聞いている。
だからなのか、担任の久保山洋一先生は「頭は良くないが真面目な生徒だ。」とマジで思い込んでいるらしい。
まあ教師に良く思われてるっていうのはある意味で波風を立てずに卒業するための必須要件かもしれないなあ。
「あれ? 吉田は?」 「あいつならとっくに帰っちまったよ。 何か用か?」
「いや、あいつに日本史のノートを見せてもらおうと思ってさ、、、。」 「お前がか?」
「ああ。」 「ノートなら、、、ここに入れてあるよ。」
「え? 出しちゃっていいのか?」 「構わないよ。 吉田と俺の仲だ。 あいつだって文句は言わんだろう。」
こいつ、金村隆はだちの中でも一番古いやつだ。 何てったって幼稚園からの付き合いだからなあ。
あの頃、俺たちは幼稚園中を走り回って保母さんたちを冷や冷やさせてたんだ。 「あんまり走らないの。 危ないでしょう?」
担当の菰原先生はいつもそう言いながら溜息を吐くんだ。 悩んでたんだね。
だから俺のノートを見たいやつが居たら見せてやってくれって言ってあるんだよ。 「お前が出せばいいじゃないか?」って?
先にも書いたとおり、授業が終わっちまったら俺はさっさと教室を出たいんだ。 煩わしいことには関わりたくなくてね。
そんな俺も3年生になっちまった。 今年は受験か就職かでクラスが別れちまう。
進学するのは3割くらいかな。 残りは決めてないか就職するんだ。
始業式の日、新任教師が発表された。 数学の教師が新しく来るらしいんだ。
「とか何とか言うけどどうせ1年の担当なんだろう? 関係無いよなあ。」 「そうでもないらしいぜ。 あいつ。」
こそこそと話し合っていると教頭の山岡先生がマイクを握った。 「えー、それではですね、新しく来られた先生方をご紹介しましょう。」
そう言って真っ先に指名したのが高橋美和だった。 「よろしくお願いします。 高橋です。 私は2年と3年の数学を担当させてもらいます。 よろしくお願いします。」
「おいおい、あいつが俺たちの担当だってよ。」 「マジすか? あんな姉ちゃんが、、、?」
数人の驚いたような声が聞こえた。 俺は美和の顔を見た。
何処となく天然そうな、それでいて近寄りがたいような雰囲気も感じる先生だ。 (こいつが数学の担当か。)
「弘明は何とも思わないのか?」 「何がだよ?」
「今度の数学の先生だよ。」 「別に大したことじゃない。 新卒の先生なんだろう?」
「いやいや、新卒なんかじゃないよ。 大学院まで行った先生なんだって。」 「は? 大学院?」
「そうだよ。 何やってたかは知らないけど。」 「じゃあ当てにならねえな。」
始業式の間中、俺たちが見ていたのは美和とかいう新しい先生の顔ばかり。 それに担任の久保山先生が気付いたらしい。
講堂を出る時、先生が俺たちに寄ってきた。 「お前ら、女の先生ばかり見てたなあ。 そんなに気になるか?」
「そりゃあ、あんな若い先生だもん。 気になるわ。」 「気にはなるだろうけど変なことを考えるんじゃないぞ。」
「分かってまーーーーーす。」 「学級委員のお前が一番分かってないんだよ。 柳原。」
「そりゃ無いっしゅ。 「そんなことばかりやってるから進歩しないって言われるんだぞ。」
それでも俺たちはどうも美和先生のことが気になってしょうがない。 職員室をチラッと覗いてみた。
「あーーーら、玉山君たち 何してるの?」 「ゲー、有村、、、。」
ドアを少しだけ開けたらそこに見えたのは音楽の有村先生だった。 慌ててドアを閉めた玉山を先生が問い詰めている。
「言わんこっちゃねえなあ。 だから止せって言ったのに、、、。」 「止せなんて言ってねえだろう?」
「言うも言わんも無い。 おめえが勝手にやったんだからな。」 本当にどうしようもない3年生だ。
ホームルームを終えた俺たちは昇降口へやってきた。 他の同級生たちも後からぞろぞろと歩いてきた。
「さてと、明日は入学式だなあ。 どんな子が入ってくるのかな?」 「山下君 また女の子の話?」
「あっそうか。 去年は空振りだったからなあ。」 「空振りだったの? それは残念ねえ。」
「何だよ その言い方は?」 「だって山下君じゃあもてそうにないもんねえ。」
「お前らだって付き合いたいとは思ってないだろう?」 「そりゃねえ、頼りない男の子よりは大谷選手みたいなガッポガッポ稼いでくれる男の方がいいわよ。」
「お前ら 人を見る目ってやつが無いんだよなあ。 そんなやつらじゃあ付き合えないよ。」 「目なら有りますけど、、、。」
図書委員の蔵元静香が食って掛かる。 「やめとけよ。 お嬢様。」
「あらあら、寺内君。 優しいのねえ。」 「優しいんじゃなくて無駄だからやめとけって言うんだよ。」
「えーーーーー?」 笹井絹子と小田原初音が目を見開いた。
「何 しゃれこうべみたいな顔してるんだ?」 「いや、その、、、。」
校門の辺りで屯している俺たちに放送の声が聞こえた。 「下校時間です。 間もなく一時閉門します。 生徒の皆さんは下校してください。」
「やべえやべえ。 速く帰ろうぜ!」 みんなは慌ててバス通りへ出て行った。
この学校、行事をやると必ず校門を一時的に閉門するんだ。 安全確認だとか何だとか言ってな。
最初の頃は出るのが遅れて閉じ込められたやつも居るんだけど、、、。 だから何とかギリギリまで生徒の動きを確認するように訴えてきた。
それで今は二度だけ放送で周知させるようにしてくれたんだ。 国中先輩の直談判のおかげでね。
通学路を歩きながら寮組と通学組は別れていく。 通学組はさらにバス組と電車組に分かれていく。
俺はずっと電車で通ってきた。 糞真面目に時間を守りながら、、、。
いつだったか、途中で電車が事故を起こして遅れたことが有る。 その時は久保山先生に憐れそうな眼で見詰められて困っちまったよ。
だってさ、登校した時にはまだ事故の情報が入ってなかったんだ。 それを聞いた時、先生は何回も「すまねえな。 すまねえな。」って謝ってた。
しょうがないよな。 毎日遅れないで来るやつが3時間も遅れて来るんだもん。
まあ、それはいいとして俺はいつものようにバス通りから駅の方へ歩いて行った。 見慣れた駅の風景がそこに在る。
絹子たちは寮に入っているからコンビニの近くで右に曲がっていく。 「弘明君 また明日ねえ。」
初音まで手を振るから香澄たちは睨みつけるような眼で俺を見る。 「俺に妬いたってしゃあねえだろう?」
「いいわよねえ。 ああやって手を振ってくれる人が居て。」 「だからやめろっつうの。」
改札を抜けても香澄はブツブツ言っていたりする。 (こいつ、何なんだよ?)
時にはうざくも思えるんだけど芳香が一緒だからいつも一緒に居るんだよなあ。 あーーーーあ、、、。
仲のいいやつも居るには居るんだが普段は教室でちょっと話をするだけ。 生徒会にも関わってないからクラスの連中には役立たずだと思われている。
勉強だって水面下でウロウロしているだけ。 いいとも悪いとも言えない。
ただ授業中は寝ることも無くよそ見をすることも無く教師の話を飽きもせずに聞いている。
だからなのか、担任の久保山洋一先生は「頭は良くないが真面目な生徒だ。」とマジで思い込んでいるらしい。
まあ教師に良く思われてるっていうのはある意味で波風を立てずに卒業するための必須要件かもしれないなあ。
「あれ? 吉田は?」 「あいつならとっくに帰っちまったよ。 何か用か?」
「いや、あいつに日本史のノートを見せてもらおうと思ってさ、、、。」 「お前がか?」
「ああ。」 「ノートなら、、、ここに入れてあるよ。」
「え? 出しちゃっていいのか?」 「構わないよ。 吉田と俺の仲だ。 あいつだって文句は言わんだろう。」
こいつ、金村隆はだちの中でも一番古いやつだ。 何てったって幼稚園からの付き合いだからなあ。
あの頃、俺たちは幼稚園中を走り回って保母さんたちを冷や冷やさせてたんだ。 「あんまり走らないの。 危ないでしょう?」
担当の菰原先生はいつもそう言いながら溜息を吐くんだ。 悩んでたんだね。
だから俺のノートを見たいやつが居たら見せてやってくれって言ってあるんだよ。 「お前が出せばいいじゃないか?」って?
先にも書いたとおり、授業が終わっちまったら俺はさっさと教室を出たいんだ。 煩わしいことには関わりたくなくてね。
そんな俺も3年生になっちまった。 今年は受験か就職かでクラスが別れちまう。
進学するのは3割くらいかな。 残りは決めてないか就職するんだ。
始業式の日、新任教師が発表された。 数学の教師が新しく来るらしいんだ。
「とか何とか言うけどどうせ1年の担当なんだろう? 関係無いよなあ。」 「そうでもないらしいぜ。 あいつ。」
こそこそと話し合っていると教頭の山岡先生がマイクを握った。 「えー、それではですね、新しく来られた先生方をご紹介しましょう。」
そう言って真っ先に指名したのが高橋美和だった。 「よろしくお願いします。 高橋です。 私は2年と3年の数学を担当させてもらいます。 よろしくお願いします。」
「おいおい、あいつが俺たちの担当だってよ。」 「マジすか? あんな姉ちゃんが、、、?」
数人の驚いたような声が聞こえた。 俺は美和の顔を見た。
何処となく天然そうな、それでいて近寄りがたいような雰囲気も感じる先生だ。 (こいつが数学の担当か。)
「弘明は何とも思わないのか?」 「何がだよ?」
「今度の数学の先生だよ。」 「別に大したことじゃない。 新卒の先生なんだろう?」
「いやいや、新卒なんかじゃないよ。 大学院まで行った先生なんだって。」 「は? 大学院?」
「そうだよ。 何やってたかは知らないけど。」 「じゃあ当てにならねえな。」
始業式の間中、俺たちが見ていたのは美和とかいう新しい先生の顔ばかり。 それに担任の久保山先生が気付いたらしい。
講堂を出る時、先生が俺たちに寄ってきた。 「お前ら、女の先生ばかり見てたなあ。 そんなに気になるか?」
「そりゃあ、あんな若い先生だもん。 気になるわ。」 「気にはなるだろうけど変なことを考えるんじゃないぞ。」
「分かってまーーーーーす。」 「学級委員のお前が一番分かってないんだよ。 柳原。」
「そりゃ無いっしゅ。 「そんなことばかりやってるから進歩しないって言われるんだぞ。」
それでも俺たちはどうも美和先生のことが気になってしょうがない。 職員室をチラッと覗いてみた。
「あーーーら、玉山君たち 何してるの?」 「ゲー、有村、、、。」
ドアを少しだけ開けたらそこに見えたのは音楽の有村先生だった。 慌ててドアを閉めた玉山を先生が問い詰めている。
「言わんこっちゃねえなあ。 だから止せって言ったのに、、、。」 「止せなんて言ってねえだろう?」
「言うも言わんも無い。 おめえが勝手にやったんだからな。」 本当にどうしようもない3年生だ。
ホームルームを終えた俺たちは昇降口へやってきた。 他の同級生たちも後からぞろぞろと歩いてきた。
「さてと、明日は入学式だなあ。 どんな子が入ってくるのかな?」 「山下君 また女の子の話?」
「あっそうか。 去年は空振りだったからなあ。」 「空振りだったの? それは残念ねえ。」
「何だよ その言い方は?」 「だって山下君じゃあもてそうにないもんねえ。」
「お前らだって付き合いたいとは思ってないだろう?」 「そりゃねえ、頼りない男の子よりは大谷選手みたいなガッポガッポ稼いでくれる男の方がいいわよ。」
「お前ら 人を見る目ってやつが無いんだよなあ。 そんなやつらじゃあ付き合えないよ。」 「目なら有りますけど、、、。」
図書委員の蔵元静香が食って掛かる。 「やめとけよ。 お嬢様。」
「あらあら、寺内君。 優しいのねえ。」 「優しいんじゃなくて無駄だからやめとけって言うんだよ。」
「えーーーーー?」 笹井絹子と小田原初音が目を見開いた。
「何 しゃれこうべみたいな顔してるんだ?」 「いや、その、、、。」
校門の辺りで屯している俺たちに放送の声が聞こえた。 「下校時間です。 間もなく一時閉門します。 生徒の皆さんは下校してください。」
「やべえやべえ。 速く帰ろうぜ!」 みんなは慌ててバス通りへ出て行った。
この学校、行事をやると必ず校門を一時的に閉門するんだ。 安全確認だとか何だとか言ってな。
最初の頃は出るのが遅れて閉じ込められたやつも居るんだけど、、、。 だから何とかギリギリまで生徒の動きを確認するように訴えてきた。
それで今は二度だけ放送で周知させるようにしてくれたんだ。 国中先輩の直談判のおかげでね。
通学路を歩きながら寮組と通学組は別れていく。 通学組はさらにバス組と電車組に分かれていく。
俺はずっと電車で通ってきた。 糞真面目に時間を守りながら、、、。
いつだったか、途中で電車が事故を起こして遅れたことが有る。 その時は久保山先生に憐れそうな眼で見詰められて困っちまったよ。
だってさ、登校した時にはまだ事故の情報が入ってなかったんだ。 それを聞いた時、先生は何回も「すまねえな。 すまねえな。」って謝ってた。
しょうがないよな。 毎日遅れないで来るやつが3時間も遅れて来るんだもん。
まあ、それはいいとして俺はいつものようにバス通りから駅の方へ歩いて行った。 見慣れた駅の風景がそこに在る。
絹子たちは寮に入っているからコンビニの近くで右に曲がっていく。 「弘明君 また明日ねえ。」
初音まで手を振るから香澄たちは睨みつけるような眼で俺を見る。 「俺に妬いたってしゃあねえだろう?」
「いいわよねえ。 ああやって手を振ってくれる人が居て。」 「だからやめろっつうの。」
改札を抜けても香澄はブツブツ言っていたりする。 (こいつ、何なんだよ?)
時にはうざくも思えるんだけど芳香が一緒だからいつも一緒に居るんだよなあ。 あーーーーあ、、、。
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