俺の彼女は高校教師
 『変身オッケー。』

 しばらくして返ってきたメールに俺は爆笑してしまった。 俺は仮面ライダーじゃないんだぞ。

 『美和ちゃん 俺を変身させたいの?』
 ちょいと意地悪に聞いてみると、、、。

 「え? 変身って何それ?』

 美和は気付いていないらしい。

 『変身オッケーって返信してきたでしょ?』

 「やだなあ。 ごめんねえ、間違えちゃって。』

 こいつはどうも香澄より天然かもしれねえぞ。 もうちっとしっかりしてくれねえかな?
でもまあ今日は誰も居ないんだ。 いいいことにしようか。
 そこへまたまた電話が、、、。 見ると非通知になっている。
「誰だよ? 面倒くせえなあ。」 そう思いながら出てみると、、、。
 「あなたがお使いの電話は2時間後に停止します。 オペレーターとお話をされたい方は1を押してください。 こちらはnttドコモです。」
「悪いな。 俺さあAUなんだわ。」 そう言って電話を切る。
(あんなんで引っかかる人って居るのかなあ? ニュースになったこと無いよね。) 確かにそうだ。
 ロマンス詐欺とか投資詐欺はよく聞くけど電話詐欺は聞いたことが無い。
まあ固定電話にだってnttドコモだって言って電話が掛かってくるんだってね? 馬鹿みたい。
中国人がやってるのかなあ? そんな噂も聞いたような、、、。
 そこでまた床に寝転がって天井を見上げていると、、、。 「また電話だよ。 今度は誰だ?」
面倒くさそうにスマホを取り上げる。 「番号は、、、。」
 その番号に俺は驚いた。 美和ちゃんじゃないかい。
「どうしたの?」 「あんまりに暇だから話そうかと思って。」
「忙しいんじゃないの?」 「昨日はいろいろとやってたけど今日は暇なのよ。」
 何とも言えない距離感に俺はなぜか萌えてしまっている。 耳に直接飛び込んでくる美和の声がビンビン脳味噌に響いてくるんだ。
「弘明君は昨日は何をしてたの?」 「香澄の家で魚釣りをしてたよ。」
「え? 魚釣りゲーム?」 「違うよ。 あいつんち魚屋だから近所に釣り堀を持ってるんだ。 そこで釣らせてもらったの。」
「へえ。 行ってみたいなあ。」 「やめときなって。 香澄に妬かれるから。」
「そうなの?」 「あいつさあ、将来は俺の嫁さんになるって聞かないんだよ。」
「あらあら、そこまで、、、。」 「そうなんだ。 だから美和とこうして仲良くするのも最初は躊躇ったんだ。」
「はっきりしていいのよ。 私はどっちでもいいから。」 美和にそう言われて俺は考えた。
(でもやっぱり美和だよな。) 「いいよ。 俺には美和しか居ないから。」
「そう? ほんとにそれでいいの?」 「いいよ。 香澄はずーーーーーっと友達だったんだから。」
なんか心臓がバクバクしている。 大人の女を捕まえちまったって感じ。
もう後戻りは出来ないぞ。 でもやっぱり、、、。
 それからまあまあ話すこと30分。 よく話すなあ。
あの顔でスマホを持って喋ってるんだろう? 可愛いんだろうなあ。
 想像しながら歩き回っていたらドアに激突してしまった。 「いてえなあ、こんちきしょう!」
膝に顔面をぶつけた香澄を笑えないじゃない。 ああもう‼
 昼は何も無い。 そこでカップラーメンを探し出してお湯を注いでおります。 待つこと3分。
マツコ・デラックスと3分居たらどうなるんだろう? それは関係無いか。
 どん兵衛の大盛り。 焼き豚ラーメンでもよかったんだけど見当たらないからさあ。
ラーメンを食べながら美和のことを考える。 美和が嫁さんになったらどうなるんだろう?
 飯を食うたびに「この方程式を解いてから食べてね。」なんて言ってくるのかなあ? それじゃあ飯がまずくなるじゃん。
いくら何でもそれはねえよな。 それこそ三日で離婚するわ。
 だからって毎晩甘えてくるのかなあ? あの顔にあのスタイルだろう?
一日で燃え尽きちゃうよ 俺なんて。 鍛えようかな。
 ラーメンを食べ終わって部屋に戻ると律子からメールが来てましたねえ。 何だろう?

 『昨日さあ、香澄といいことやったんだって? 何をやったの?』

 (あの野郎、また余計なことを吹き込みやがったな。) 俺は呆れてしまった。

 『いいことなんかしてないよ。 河豚を釣っただけだ。』

 『それだけなの? 思い切って告白でもされたのかって思った。 ざんねーーーーん。♠♠♠』

( 💛マークの次は♠かよ。 やめてくれよ まったく。) 美和といい、、律子といい、何なんだよ?
俺はさあ絵文字も顔文字も使わない派なんだ。 面倒くさくて。
 と思っていたら美和からまたメールが来た。

 『日曜日さあ、私がお弁当も作るからいつもの時間に待合せましょうね。☮』

 (今度はピースマークだって。 もう、、、。) 苦笑しながら返信する。

 『了解了解。 楽しみにしてまーーす。』

こう返すのが精一杯。 面白くないだろうなあ。
と思っていたら香澄からメールが飛んできた。 (今度は何だよ?)

 『私がりっちゃんに嘘吐いたってメールしたでしょう? 許さないんだからね。』

 『勝手に暴れてな。 いいことをしたってお前が書くからいけないんだぞ。』

 『何よそれ? 魚釣りだっていいことじゃない。』

 『じゃあ、その通りに書けよ。 馬鹿。』

 『うわーーーー、また私を馬鹿にしたなあ? 許さないんだから。』

 『許してもらおうなんて思っておりませんがね。 ハッハッハ。』

 『ひどいひどいひどい。 一生恨んでやるーーーーー。』

 『5分と続かないだろう? やめとけよ。』

 『んもう、、、、、意地悪。』

 そこでメールは来なくなった。 やっと静かになったなあ。
それからしばらく俺もスマホも静かなままだ。 平和だねえ 平和だねえ。
やだねったらやだねえ。 やだねったらやだねえ。 古臭、、、。
 そういえば〈孫〉でフラッシュヒットを飛ばしたあのおじさんはどうしたんだろう? 一瞬で見なくなったけど。
そんな話を母さんたちがしてたな。 あのおじさんって誰なんだろう?
 昔は風船で飛んで行って海に消えたおじさんまで居たとか、、、。 冒険するのはいいけど考えろよな。
あの時は海上保安庁も気が気じゃなかったんだってなあ。 そりゃそうだよ。
何か起きれば救助しなきゃいけないし、、、。 でも本人はそれを断ち切って飛んで行ったわけだ。
 積乱雲が目の前に立ちはだかってたとか、、、。 あんなんが目の前に居たら怖いどころの騒ぎじゃないぜ。
吸い込まれたら最後、燃やし尽くされて落ちるしかない。 覚悟したんだろうなあ。
だとしたら何も見付からないってのは正解かもしれないなあ。 木っ端微塵どころの騒ぎじゃないぜ。
もう30年以上前の話なんだってね? 今から思えば勇気が有るなあ。
今、それだけの冒険をしたい人って居るのかな? 居ないよね?
みんな何かに怯えてる。 それが何だか分からないけど。
怯えてるのに気付かなくて人を殺してしまう。 そんなんでいいのかい?
しかも殺した人は無期懲役を求めたがる。 虫が良過ぎるよ。
 さてさて今は何時だろう? モソモソしていてもまだまだ2時だって。
暇な時には本当に暇なんだよなあ。 こういう時には香澄を虐めて遊んでるといいんだけどなあ。
なんて俺もひどい男だなあ。 自分で言っといて吐きたくなるぜ まったく。
 YouTubeを探してみる。 面白い動画は無さそう。
玩具系も何人か見たけど面白くないんだよなあ。 やってる本人は面白いんだろうけど。
中にはさあ「ここはシールよりプリントのほうがいいよ。」って評論家みたいなことを偉そうに言ってる人も居るし、、、。
あんたがレビューさせてもらってるんでしょう? ユーチューバーだからっていい気になるんじゃねえよ!
 そんなわけでまたまたゴロゴロしてるわけ。 ああ退屈。
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