さかなの眼
「滋賀に行くことにしたって、何で?」
コンクリート剥き出しのオフィスの窓から
夏の暑い日差しが照り付けて
康子の机だけ熱帯夜のように暑い
艶々のぱっつんボブ黒髪にも汗を滲ませている。
康子は仕事のパートナーで
大学時代からの親友だ。
歯に衣着せぬ物言いで営業をかけ
仕事を取ってくる会社の要だ。
9年前に康子は私と一緒に刺繍工房を立ち上げた
きっかけは結婚歴にバツがついて
私が精神的に参っていた頃。
療養する目的で始めた刺繍で
これでもかとメルヘンチックな刺繍が
あげたところ瞬く間にSNSでバズったことだ。
服飾関係の仕事をしていた康子がそれを見て
刺繍を生業にした事業をしようと誘ってくれた。
厳しい時期もあったが3年程で軌道に乗った。
今は隣の部屋で刺繍の機械2台に
3人の従業員を雇った刺繍屋だ。
扇子を仰ぎながら書類に目を通していた
康子の顔が「あっついあっつい」とこちらを向いた。
おしゃれな黒縁メガネ越しにじっとのぞみをみる。
「1週間ぐらい夏休みも兼ねて
行ってこようかなって…」
のぞみは康子の眼差しにたじろぎながら答えた。
「当分大口の仕事も、制作依頼も
セーブしてるから大丈夫。
のぞみの夏季休暇もを取ってないからいいけど
何だって今滋賀なの?」
「滋賀って、前のぞみが住んでたとこでしょ?」
メガネを机に置くとため息をつくように康子は話す。
訝しげな顔をこちらに向けて来た。
1ヶ月前に父を闘病の末亡くし、
病弱だった母も10年前に亡くなり私は
今や天涯孤独。
父の最後の一年は自宅介護で大変だったから
今は気の抜けた風船のようだ。
康子はそれを心配して当分休むように言ってくれた。でも忌引き明けから出勤していた。
コンクリート剥き出しのオフィスの窓から
夏の暑い日差しが照り付けて
康子の机だけ熱帯夜のように暑い
艶々のぱっつんボブ黒髪にも汗を滲ませている。
康子は仕事のパートナーで
大学時代からの親友だ。
歯に衣着せぬ物言いで営業をかけ
仕事を取ってくる会社の要だ。
9年前に康子は私と一緒に刺繍工房を立ち上げた
きっかけは結婚歴にバツがついて
私が精神的に参っていた頃。
療養する目的で始めた刺繍で
これでもかとメルヘンチックな刺繍が
あげたところ瞬く間にSNSでバズったことだ。
服飾関係の仕事をしていた康子がそれを見て
刺繍を生業にした事業をしようと誘ってくれた。
厳しい時期もあったが3年程で軌道に乗った。
今は隣の部屋で刺繍の機械2台に
3人の従業員を雇った刺繍屋だ。
扇子を仰ぎながら書類に目を通していた
康子の顔が「あっついあっつい」とこちらを向いた。
おしゃれな黒縁メガネ越しにじっとのぞみをみる。
「1週間ぐらい夏休みも兼ねて
行ってこようかなって…」
のぞみは康子の眼差しにたじろぎながら答えた。
「当分大口の仕事も、制作依頼も
セーブしてるから大丈夫。
のぞみの夏季休暇もを取ってないからいいけど
何だって今滋賀なの?」
「滋賀って、前のぞみが住んでたとこでしょ?」
メガネを机に置くとため息をつくように康子は話す。
訝しげな顔をこちらに向けて来た。
1ヶ月前に父を闘病の末亡くし、
病弱だった母も10年前に亡くなり私は
今や天涯孤独。
父の最後の一年は自宅介護で大変だったから
今は気の抜けた風船のようだ。
康子はそれを心配して当分休むように言ってくれた。でも忌引き明けから出勤していた。