～転生悪役令嬢の裏道攻略～ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド

　できるだけの力は尽くしても、どれだけ近づけたのかはわからない。今も記憶に鮮烈に残る、あの素晴らしい味に。

　だが、ここまで来て望む味に達していなかったとしても、これが今のジェミーの全力だ。たくさんの仲間の力を結集させた、努力の証。きっと、おいしくないわけがない！

「ここまで来たら、食べてみるしかないわ！　えいっ！」

　不安を振り切り、意を決するとパクッとそのひとかけを口の中に放り込む。
　そしてもぐもぐ。ざわついていた工場内が、ぴたりと静まり返る。

「どう、なんだ？　焼き菓子とかみたいに、食欲を誘う甘い香りはそんなにしてこないんだが」
「しーっ、集中させて差し上げましょ？」

　周りの人間が、目を閉ざし口を動かすジェミーの姿を固唾を飲んで見守る。
　その内に白い喉がごくりと飲み下すように動いて、おそるおそる、ルゼが彼女に尋ねた。

「ど、どうでした？　あなたの望むものは作り出せましたか？　ジェミー嬢」
「す……」