~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド
 一気に軽くなった足取りで馬車に乗り込んだルゼが窓から顔を出して手を振ると、思い付いたようにジェミーが叫んだ。

「あっそうだ! ルゼ、またそっちにチョコレート送るから! 楽しみにしといて!」
「ああ!」

 それだけ返すと、ゆっくりと馬車は動き出し、すぐに彼女の小さな体は見えなくなってしまう。
 だが、ルゼの胸の部分は、今もほっこりと温かい。

「なにかいいことでもありましたかな?」
「まあね」

 なんでもお見通しのウィリアムはそれ以上なにも聞かない。でも多分、今のこちらの顔を見れば、彼でなくてもどんなことがあったかは悟られてしまいそうだ。

 これまで孤独だったルゼの人生に大きな変化をもたらしてくれているジェミー。彼女が許してくれるならば……これからも、少しずつでいいから互いの距離を縮めていきたい。

 馬車がゆっくりと動き出す中、ルゼはこうして誰かと触れ合えるように生まれてこれたことを、初めて感謝したいと思った。
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