～転生悪役令嬢の裏道攻略～ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド

（セニア、私は悲しい）

　ジェミーは驚きを通り越して両手で顔を覆った。だってあの子、自分が転生してこなければ、誰もが羨む立派なヒロインとして活躍できていたはずだったのに。
　いっそ清々しいほどの開き直りっぷりに、ジェミーは陰で涙する。

　かっての物語の感動が目の前の圧倒的現実に塗り替えられていく虚しさを抱え、ジェミーはさよならヒロインと呟くと、そんな彼女の変わり身を見守っていた。
　すると彼女もこちらに気づいたらしく、やや恥ずかしそうにしながらもぐっと顔に気合を入れ、こちらに歩いてきて胸を張った。

「あら、お向かいのジェミーズなんたらのオーナー様ではないですか。わざわざご自身で敵情視察ですかしら？」

　周囲がざわつき、ぽっかりと空間を作ってふたりの対峙を見守る。
　ジェミーとしては、あんまりことを荒立てたくはなかったのだが、向こうがこうして噛みついてきたのなら仕方がない。袖を振って扇を取り出し、せめて悪役令嬢の仮面を被ってやろう。

「うふふ。まさかセニア様が商売にご興味がおありだとは思いもしませんでしたわ。けれど、わざわざ当店の向かいにお店を構えられるなんて、まさか敵対する意思でもおありですの？　しかも外観も商品内容も、こちらの猿真似で悪意しか感じられませんけど？」