~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド
「私をここに呼び寄せて、どうするつもりです? 別にかまいませんよ、家族と同じように捕えてみても。私が今日ここを訪れていることは、いろいろな人が知っていますから。一日戻らないだけでも、あなた方に疑いが向くでしょうね」

 今日ジェミーが帰らないようであれば、前もって屋敷の使用人に、第一王子やトーミアス家の執事ウィリアム、騎士団長ガーフィール、並びにセニアなどに宛てた手紙を送るよう指示している。

 この期に及んでジェミーまで失踪したとなれば、おそらくロドリエ商会の関連施設や、もしかしたらクラフトの身辺にまで調査の手が伸びるやもしれない。
 王位継承の儀が迫る今、なにか起これば立場が危ういのはクラフトの方もだ。
 それを楯に、ジェミーは彼にこんなことをやめるように迫る。

「クラフト殿下、あなたがすべての黒幕だというのなら、今すぐ私の家族とルゼ様を解放してくださいっ! あなたがご自身の不遜な企みに当家を巻き込むから、こんなややこしいことになったのではないですか! もう王位の簒奪など諦めてください!」
「ずいぶん人聞きの悪いことを言うんだね、ジェミー」

 だがクラフトは、ここまで来てもいっそ気味が悪いくらいに爽やかな笑みを絶やさない。
 その笑いに不自然なところは微塵もなく、それを見てジェミーは再認識した。
 彼は己のしていることを、一片の疑いもなく正しいと信じ込んでいて、ブレることはない。
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