すれ違いだらけだった私たちが、最愛同士になれますか?~孤高のパイロットは不屈の溺愛でもう離さない~

その後、地上滑走の許可をもらい、いよいよ離陸が近づいてくると管制タワーへと交信が引き継がれる。

『Sakura Air324,Wind 050 at 3knots,Runway 16 cleared for take off.』
(サクラ航空324便、風向き50°、風速3ノット、滑走路16番の離陸を許可します)

管制タワーから離陸の許可をくれたのは、若い女性の声だった。まるでアニメのヒロインのような可愛らしい声だが、凛とした話し方はとても聞き取りやすい。

「Runway 16 cleared for take off.Sakura Air324.」
(滑走路16番より離陸します)

久しぶりの乗務にピリッとした緊張が走る。今日一緒に飛ぶ長嶋機長は、転職前に一度一緒に飛んだことがある。尊敬できる五十代のベテランパイロットだ。

往路は長嶋が操縦桿を握るPF(Pilot Flying)を担い、大翔が計器類の監視や管制塔との交信を担当するPM(Pilot Monitoring)を担当する。復路はこれを交代する予定だ。

大きな音を立てて機体が加速していき、規定の速度に到達したところで大翔が「ローテート」とコールすると、長嶋がそれに応えて機首を上げる。

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