すれ違いだらけだった私たちが、最愛同士になれますか?~孤高のパイロットは不屈の溺愛でもう離さない~

ふわりと地面から浮き上がり、機体が上昇していることを確認したうえでギアアップ、交信をタワーからディパーチャーへと引き継ぎ、ゆっくりと右に旋回しながら航空路へと上昇していく。

『Sakura Air324,Contact Departure.Good day!』
(ディパーチャーと交信してください。いい一日を)

ふたりで息を合わせ、大きな機体を安全に目的地まで飛ばす。何度経験しても緊張するし、多くの人の命を預かっているのだと背筋が伸びた。

「どうですか? 久しぶりの乗務は」
「もう少し緊張して硬くなるかと思いましたが、落ち着いています。長嶋キャプテンから色々学びたいと思っているので、よろしくお願いします」
「こちらこそ。頼もしい相棒で嬉しいですよ」

誰に対しても丁寧な言葉遣いの長嶋が大きく頷いた。彼は大翔が目指すMFFパイロットでもある。

「それにしても、今日のCAたちの気合いの入り様はすごかったですね。各務くんが帰って来たんだなと実感しましたよ」

くすりと笑われ、大翔は肩を竦める。謙遜しようにも、CAやグランドスタッフの女性から熱い視線を浴びている自覚はあった。

「俺には、昔から心に決めた人がいますから」

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