すれ違いだらけだった私たちが、最愛同士になれますか?~孤高のパイロットは不屈の溺愛でもう離さない~

「お兄ちゃん?」

美咲が不思議に思って篤志の視線の先に目を向けると、空港ではあまり見慣れない〝航空局〟と書かれた消防車が滑走路に入ってきたところだった。数台の消防車に続いて救急車などの緊急車両が滑走路脇に待機しているのも見える。

「なに、あれ……」
「滑走路が閉鎖されたな。なにかトラブルがあったんだろう」

そう言いながら、篤志が視線を空へ向けた。美咲も同じように空を見上げると、目視できるギリギリの位置にある一機の飛行機がこちらに向かってきているのがわかった。

よく見ると、機体の右側に黒く細い煙がうっすらと立ち昇っている。

「おそらくエンジントラブルだな」

ゾクッと身体が震えた。
滑走路を閉鎖し、緊急車両が配備されているということは、万が一にも最悪の事態になる可能性があるということだ。

父も兄もパイロットであるため、そういったリスクが常に伴う仕事だということは理解していた。特に父は長年フライトをしていたため、バードストライクや悪天候などで何度かトラブルに見舞われたことがあるらしい。

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