マリアンヌに私のすべてをあげる

マリアンヌの涙


マリアンヌ……どこにいんだ。
人が多すぎて見つかんない。

大広間に戻った私はマリアンヌを捜した。

ーーどこだ……どこに……

ふっと視線をバルコニーへやると、そこにマリアンヌとクリストファーが……

ーーなんだバルコニーにいたのか。

急いでバルコニーへ向かいマリアンヌに声をかけた。

『マリアンヌ、さっきは……』

言いかけた言葉が詰まる。

ーー泣いてんのか……マリアンヌ……

クリストファーがうつむくマリアンヌの涙を優しく指で拭った。
殺気立った目でクリストファーが私を睨む。
だけどそんなことどうだっていい。

ーーマリアンヌが泣いてる。

猛烈に胸が締め付けられていく……
頭が真っ白になっていく……
どう声かけていいのかも分からなくなってしまった……

何も言えず黙り込んでしまっていると、マリアンヌが震える声で話しだした。

『クリストファー様、レオナルド様…… わ、私、今夜は屋敷へ帰らせてもらいます……ク、クリストファー様、せっかくご招待していただいたのに……も、申し訳ございません……』

『気にしないでいいよ。帰るなら馬車を呼ぶから一緒にエントランスまで行こう』

クリストファーがマリアンヌの背に手を当て一緒に行くよう促す。

『は、はい…… ありがとうございます……』

ーー行かないで欲しい…… 行っちゃだめだッ!!

『ま、待って!! マリアンヌに話したいことがあるから!! ここにいて欲しい!!』

マリアンヌはまだうつむいたままだ。
このまま帰せない……
何も話さないままじゃ……
うつむかせたままじゃ……

『マリアンヌ嬢は泣いてる理由を聞いても僕に何も言わなかったけど…… 君のせいだろう? レオナルド、僕言ったよね。許さないって』

心の底から呆れ返ったようにしてクリストファーが言い放つ。

『そうだ。マリアンヌが泣いてるのは自分のせいだ…… だからこそ話さないといけないことがある!!』

『話し合う段階はとっくに過ぎたんじゃない?』

クリストファーの言う通りだ。
マリアンヌはレオナルドに無下にされ続けてきたから、本来ならば話したいだなんて言える立場にはない。

ーーけど今のレオナルドは私だッ!!

私はマリアンヌを裏切ってない!!
傷つけたり泣かせたい訳でもない!!

『マリアンヌ…… 話そう……頼むから……』

ーーお願いだから行かないで欲しい……

うつむいたままのマリアンヌにすがるような思いで訴えた。

『………はぃ』

消え入るような声でマリアンヌが返事をする。

はーーぁ。
よかった……口も聞いてくれないかと思った。

『マリアンヌ嬢、本当にいいの? 大丈夫?』

クリストファーが気遣うようにして聞く。

私は全く信用されてないな。
無理もないか……

『はい、大丈夫です。クリストファー様、ご心配おかけしました。レオナルド様とお話ししたいと思います』

『そう…… わかったよ。僕は大広間へ戻るけど、何かあったら声かけて。それじゃあまた、マリアンヌ嬢』

『はい。ありがとうございました』

顔を上げて見せたマリアンヌに優しく微笑むクリストファー。
そして私にはトドメを刺すかのように殺気立った目で、睨みつけまくって去って行ったクリストファー。

また私の背筋が凍りそうになったわっ。
完全に爽やかクリストファーじゃなくなってるし。いつかマジで葬られそうだ。

そんなことよりも……

マリアンヌの顔を見ると、涙で目が潤んでる。

ーー私のせいだ……

『残ってくれてありがとう。マリアンヌに聞いて欲しいことがあるんだ……』

『私も……私もレオナルド様に話したいことがあるんです』

マリアンヌの話……話ってなんだろう……







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