公爵令嬢の婚活事情〜王太子妃になりたくないので、好きな人と契約結婚はじめました〜
 公爵家のメイド達にも手伝ってもらい、シルヴィアの好きなお菓子を選りすぐって一口サイズで用意したベルは、

「それで、どうして急に悪役令嬢なのです?」

 ミルクティーを飲みながら楽しそうにシルヴィアに尋ねる。

「だって、私このままだと王太子妃候補にされてしまうわ」

 むぅっと不服そうな顔をしたシルヴィアはベル作の甘いココアホイップのせを一口飲んで、

「美味しい。やっぱりベルのココアが一番だわ」

 ほっとしたようにようやく顔が緩む。

「王太子妃、ですか?」

 聞き返しながらベルは首を傾げる。
 この国の王太子はまだ10歳を迎えたばかり。
 確かに婚約者はまだいないが今年18歳を迎えるシルヴィアとではいささか歳の開きがあり過ぎる。
 いくらシルヴィアが名門ブルーノ公爵家の令嬢だとしても、この国には他にも王家と釣り合う家柄の王太子と歳近い令嬢もいる。
 そんな中でシルヴィアが第一候補に上がるとは考えづらいと疑問符を掲げるベルに。

「うちの王太子じゃないわ。イスラン王国の、よ」

 何か嫌な事でも思い出したのか思いっきり顔を顰めた。

「イスラン王国の王子様……って、現在王立学園に留学中の?」

「そう、そのカルロス・イヴァン・イスラン殿下よ」

 中途半端な時期に唐突に留学して来た他国の王太子は一時社交界でも話題に上がっていた。
 特に御伽話のようなプリンセスストーリーに憧れる子女達の間で。

「随分とロマンチストな方だとか。それを除けば容姿端麗、頭脳明晰、向上心もあってとっても素敵な王子様だと聞いていますが」

「その欠点(・・)が残念過ぎるのよ!」

 ドンっとテーブルを叩いて猛抗議をするシルヴィア。
 公爵令嬢としてどこに出ても恥ずかしくない綺麗なテーブルマナーを常日頃心がけている彼女にしては珍しい。

「欠点、というと……ロマンチストの部分ですか?」

「あれはロマンチストじゃないっ。妄想癖っていうのよ!!」

 スパッと言い捨てるシルヴィアを見るによほど腹に据えかねているらしい。

「誰が運命の相手よ! 冗談じゃないわ!! 私はエステルから頼まれたから面倒を見てあげていただけ。それなのにあの王子ときたら、ある事ない事ない事ない事ない事をっ!!」

 他の生徒に匂わせやがって、とシルヴィアはぎろっと恨めしげに目を釣り上げる。
 が、お人形みたいに整った顔立ちのシルヴィアがやっても可愛いだけである。
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