後悔
静まり返る店内。
私のせいで、みんなの気分もお店の雰囲気も悪くしてしまった。
前回もマスターに迷惑をかけてしまっていることもあって、もっと申し訳なくなる。

ケンジさんは煙草に火をつけ、もうケロッとしている。
マコトは変わらずタツヤをにらみ続ける。

少し奥には席に残ってた3人の姿。
異変に気づいて来たんだろう。

ハァとため息がでた。

すると、ケイスケがタツヤに、「先帰ってて。」と言い、タツヤは少し悔しそうな表情で店を出て行った。

タツヤが帰るとケイスケが私たちに向かって頭を下げた。


「ツレの失礼な言動、すいません。」


ケンジさんとマコトは無言のまま。


「あ、いや、本当の事だから…!」


私は慌てて答えた。
一瞬、ケイスケの表情が苦しそうに歪んだ気がした。


「あの、少しアカリと話しさせてもらって良いですか?」


ケンジさんに向かいケイスケがきく。
突然の言葉に私は驚いた。


「え!」

「アカリに聞けよ。」

「…!」

「アカリ、いい?」

「…………。」


どうすれば良いのか分からずケンジさんを見たけど、ケンジさんは、


「マコト!席行こうぜ!腹へった~!
ほら!お前らも行くぞ。」


チラッとも私を見ないまま奥へ歩き出してしまった。
マコトは振り向き、私に頷いてみせた。
ちゃんと話して来いと言っているんだろう。


「あっ!お触り無しな!」


突然、ケンジさんはそう言ってこっちを振り返ることなく、片手を上げて奥の席へ行った。


「ハハッ。じゃ、外行こうか。」


少し笑って、外へ促すケイスケに私は黙って着いて行く。

にしても、お触りって…。
何となく妙に入ってた肩の力が少しだけ抜けた。
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