後悔
時間の流れが遅く感じて何度も時計を気にした。
今日の最終のお客さんは閉店時間を過ぎることなく退店した。
なんとなくそわそわしている私は、そそくさとタオルを集め洗濯機を回した。
ホウキでフロア内のゴミを丁寧に集める。

ジャラっと聞こえた方にはケンジさん。
車のカギを握り早々に店を出る。


『悪い。あと頼む。お疲れ！』


あっという間に行ってしまった。


ドアから出る瞬間、振り返ったケンジさんと目があった。
ふわっと優しく上がった口角。
トクンと胸が小さくなった。

予想だにしない自分の胸の音に驚いた。
そして、妙に気恥ずかくなった。
私はほうきでそこらじゅうを掃きまくった。

これから、また彼女と話し合いだ。
きっとこれが最後の話し合い。
「最後にする」と言った今朝のケンジさんは本気の顔だった。

どこで話するのだろう。
ちゃんと今日で解決できますように。
これ以上、２人が苦しまなくてすみますようにと、密かに祈る。


明日は定休日。
みんな飲む気満々で帰り準備をしている。
私はとても飲む気にはなれなくて店に残る事にした。
どうせ明日は休みなんだ。
ケンジさんが来なかったら帰ればいい。
そう考えていた私は、みんなにご飯誘われたけど、用があるから残ると伝え断った。


「やぁだ～！行こうって！アカリ～！」

「今日はすいません！今度埋め合わせしますから！」


それでもしつこく誘うヤヨイさんをリョウさんが何とか連れて行った。
ヤヨイさんには申し訳なかったけど、行っても気になって気がそぞろになってしまいそうだ。
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