崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない

プロローグ:宣告からの、縋りつき

「このままだと打ち切り、ですね」
「嘘ですよね!? 増本さん!」
「嘘じゃないです、澤みのり先生」
「三度目の正直じゃないんですか……?」
「二度あることは三度ある、と言うことで」
 入沢みのり、ペンネームは澤みのり。三十歳の誕生日目前のギリギリ二十代で職業は少女漫画家。
 ――いや、三度目の連載打ち切りを宣告されそうになっている、崖っぷち漫画家である。

「そんな! 今度こそ自信作だったのにッ」
 打ち合わせで来た編集ブース。そこで担当編集である増本さんに告げられた打ち切りの可能性に思わず立ち上がり声を荒げるが、増本さんは静かに首を振るばかり。その様子に浮かせた腰を再び椅子へと戻した私はガクリと机に突っ伏した。
 読み切りはそこそこ伸びる。だから私の話が面白くないわけではないはずだ。それなのに初めての連載は五話で打ち切られ、次の連載は少し伸びて十三話で打ち切り。今度こそと気合を入れて挑んだ三回目の連載は、なんと最速四話目である。
(どうしてなの)
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