崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない

1.責任の所在はどこにある③

 洗面所で顔を洗い、ドラム式洗濯機の中から服を取り出す。
 下着だけでなく着ていた全ての衣服が洗濯されていた。
「律儀……」
 はぁ、と小さくため息を吐きつつ洗面所を出る。そのまま僅かに音がする方へと足を進めると、甘いいい匂いがふわりと香った。

「え、えっ?」
「ほら、席座れ。腹減ってんだろ」
「こ、これ、たっ、高尚さんが?」
「高尚でいいって。昨日はそう呼んでたし」
(だからそれを覚えてないんだけど)
 だがお腹がすいているのは確かだった。チラリと向けた視線の先には家でこんなに分厚いパンケーキが作れるのかと思うほどふわふわのパンケーキが置かれ、ご丁寧にはちみつまでかかっている。ホイップされた生クリームはないが、切り分けられたオレンジとブドウも二粒、パンケーキと一緒にお皿に盛り付けられていて色合いも可愛い。そしてそんな可愛くオシャレなパンケーキと一緒に並べられているのは。
「……アサリの味噌汁?」
「おう。二日酔いにはコレが一番効くからな」
「可愛いパンケーキの隣に、味噌汁って」
「白ご飯がいるならそれもあるけど」
「味噌汁に混ぜろってか!」
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