崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない

　残念な組み合わせに唖然とした私に更に残念な追い打ちがかけられ思わずつっこんでしまう。反射的に声を荒げた私に、嫌な顔をするどころかどこか可笑しそうに彼が吹き出した。
「ははっ、まぁ組み合わせはアレだが美味いと思うから食べれば？」
「確かに、美味しそうだけど」
「そりゃ俺の手作りだからな」
「手作りなの！？」
「他に誰が作るんだよ」
「いや……」
　そうかとは思っていたものの、本人の口から告げられるとやはり破壊力がすごい。
（というか、ここって自宅、よね？）
　
　白を基調にしたリビングに黒を基調とした家具。モノクロでシンプルを極めたような室内は人が済んでいるというよりどこかのモデルルームのようだった。
　寝室では上裸だったが、今は白のシャツを着ている。下は今もスウェットだが、そんな姿すらもどこか洗練されて見え、この部屋がやたらと似合うようだった。

「……村地高尚、三十二歳。職業は弁護士で、秀次とは高校の同級生だった」
「え」
「ん？　視線を感じたからな。俺のことを知りたいのかと思って」
「！」