崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
「だからそうだって言ってるじゃない。ちょっとみのり、あんたの彼氏、裁判ごっこしてるわよ。しかも私を盗作犯に仕立て上げようとしてるんだけど? だったらせめて証拠を出しなさ……」
「この話は、俺が書きみのりのクラウドに保存したものだ。念のため俺とみのりでクラウドファイルを交換したんだよ」
「――、え?」
 みのりの言葉を遮るように宣言された言葉に、浅見の顔が一気にひきつる。

 以前高尚が私にあるひとつの〝提案〟をした。
 その内容が、お互いのパスワードを交換し、使用クラウドを交換するというものだったのだ。
(高尚に言われるがまま交換したけど、このためだったんだ)
 私が今考えてる話のネタやエピソードは高尚のクラウドへ保存されている。単純にまた誰かに見られないよう使っていいよ、という意味だと思っていたのだが、罠を仕掛ける意味合いもあったのだろう。

「失礼ですが、私と貴女は今回二回目の対面で間違いありませんね?」
 口調を弁護士モードへと戻した高尚が質問すると、浅見が僅かに顔を伏せる。だがすぐに顔をあげ、口を開いた。

「証拠は? 偶然内容が被るなんて誰との間でも起こりえるでしょ」
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