崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
「みのり?」
 少しだけ驚いた高尚の首に腕を回し、抱き寄せて私からも口づけをする。動きを強制的に止めたことで少しだけ余裕ができた私が、その勢いでぐるりと体を反転させ彼に覆いかぶさるように体勢を入れ替えた。

「私だって大好き! 確かにはじまりはお酒の勢いで、記憶だってあんまりないけど! でも、今は誰よりも高尚のこと、愛してるからっ」
 一気に捲し立てるようにそう断言し得意気に笑うと、私の下できょとんとした高尚がすぐにくしゃっと笑う。
「そりゃ、光栄だ」
 じわりと頬を染め、本当に嬉しそうに目を細められると、ドキリと胸が高鳴った。

 きっと、まだまだ喧嘩するだろう。
 仕事を優先しがちな私たちのことだ、呆れたり、時間のすれ違いを起こしてしまう日が来るかもしれない。
 それでもきっと、彼となら。

「幸せにする」
「それ、俺のセリフだわ」

 ぎゅっと彼の手を握る私の左手の薬指には、彼から貰った指輪がキラリと輝いていた。


 苦しいことも、辛いこともあったけれど、それでも彼となら大丈夫だという確信が私の中にある。
 そんな想いと、そんな決意が漫画にも影響を現したのだろう。
 
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