崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 付き合うことを決めた時に色々言ってはくれたが、その時はお互い恋をしているわけではなかった。
 けれど彼と過ごし始めた今、私の中で彼との時間が思った以上に大事になっており、彼を好きになっているとそう感じる。彼もこうして週末誘ってくれるのだから、少しくらい私のことを好きだと思ってくれているはず。そしてそれはどんなところなのかと気になった。

「ねぇ、高尚って私のどういうところがいい?」
 キッチンから戻り、早々に仕事を再開させようとしている彼へと思わずそんなことを聞いてしまう。
 流石にどこが好き、と聞く勇気はなかったものの、それにほぼ近い質問が口から思い切り飛び出したことに驚いたのは私の方だった。言ってから突っ込み過ぎたかも、とヒヤッとするが、既にパソコンと睨めっこを開始していた高尚が無意識なのか、まるで反射のように口を開いた。

「仕事と私どっちが大事なのって言わないところかな」
「……え」
「……あ?」
 その発言にお互い固まり、顔を見合わせてしまう。そしてみるみるうちに彼の顔が〝しまった〟という表情になった。
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