崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 下書きの線を整え、ちゃんとした美しい線にするのだ。その作業が終わればベタという、黒で塗りつぶす作業をし、ツヤベタという人物の髪の毛を適度に光が当たってみえる部分だけ白く残して塗ったり、全体を華やかにするためにトーンといういわば中間色の表現をする色付け作業がある。
 
 ツヤベタは作者の個性が出る部分なので私がするが、その他のベタ作業やトーン作業は基本的にアシスタントさんにお願いしていた。
 慣れている浅見には、その作業の他にも主要人物ではない周りの人物、いわゆるモブキャラのペン入れもお願いしている。
 
「あ、でもまずは先に修正入った大ゴマ直さなきゃ」
「私は背景指定入ってるとこにどんどん背景入れてくね」
「お願いしまーす」
 
 一瞬気まずい雰囲気になったものの、こうやってすぐに切り替えてくれるのが浅見のいいところだろう。
(私も浅見の気持ちはよくわかるしね)
 そんなことを考えながらアシスタントさんへ、事前にお願いしていたように明日の夕方から入って貰えるよう連絡を入れた私は下書きの直しをはじめたのだった。
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