崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない
 メッセージアプリに彼からの受信を確認してつい頬が緩む。どうせ今回も意味のある連絡ではないのだろう、なんて思いながら起動すると、美味しそうなご飯の写真が二枚添付されている。受信時間は二十二時過ぎで、どうやら彼の昼ご飯と夜ご飯の写真らしい。
 メッセージ本文には一言、『飯テロ』とだけ書かれていた。

「私がどうせ仕事に夢中になってメッセ確認するのが深夜だってわかってたな?」
 お腹のすくこの時間の、まさしく『飯テロ』を受けて思わず苦笑してしまう。
 そんないたずらっ子のようなところが堪らなく可愛いだなんて、悔しくて教えてはあげないけれど。

 なんて返信しようかと考え、私からは『深夜ラーメンで太ったら責任取ってください』と打ち込み、その文章を深く考えることなく送信する。どうやら高尚の方もまだ起きていたらしく、私が画面を閉じるより早い返信が来て驚いた。
「たまたまスマホ開いてたとか……?」
 その返信スピードに驚きつつ内容を確認すると、『太ってもいいが太らなくてもいいっつの』と書かれている。その文章の意味がわからない。
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