抜け、幸子!
六年生の担任をしていた時のこと。

幸子という、クラスでも少し目立つ子がいた。

おかしいと思うことは大人であろうと、はっきりと最後まで引き下がらない性格で立場の弱い子に対してはスゴく優しい。

幸子はそんな子だった。


そんな幸子が、暗く沈んだ表情をしているのに気づいたのは、運動会を間近に控えた学年全体の運動会練習の後。


運動会の花形種目、運動会のラストを飾る六年生のクラス対抗全員リレー。


「幸子、どないしたんや? えらい暗い顔して……」

「なぁー、先生 抜いてええんかな?」

「抜いてええか? って リレーのことか?」

「うん……うちのクラスのリレーって、アンカーの2人手前でアタシの番やんか……んでな。

アタシのところで5組の芳樹を抜くやん……。

なぁー先生 アタシ、芳樹のこと……抜いてもええんかな?」



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