抜け、幸子!
5組の芳樹は、障がいを持っている。

小児麻痺で足が不自由で走るのも遅い。

幸子がバトンをパスされる頃、芳樹は既に第2コーナーぐらいにいる。

でも足の速い幸子は、その芳樹を いつも第3コーナー辺りで追い越す。


幸子はそのことを悩んでいた。


「誰かに何か言われたんか?」

「うん……5組の男子からやねんけどな。

芳樹も一生懸命走ってるのに よく平気で抜かせるなあって。

それに3組の先生もアタシが芳樹を追い越さへんかっても、アタシの後の2人が速いから最後は1周近く差が広がるやん。

……だから、必死に走って抜かさへんでもええのと違うか? って」


幸子はそう言って俯き、今にも泣き出しそうにしていた。


咄嗟にどう答えていいのか、私は答えに困って幸子に尋ねた。


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