怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
「ねえ、高階さん。だったら、出勤と退勤の時お兄ちゃん連れてけばいいんじゃない? お兄ちゃんこんな見た目だから、さすがに変な人も寄りつけないわよ」

「っ、みどりんさん!?」

「ああ、それは良いかもしれないな」

 何を馬鹿なことを言ってるんだ、とでも言うかと思いきや、優流はなぜか凛の提案に賛成していた。予想の斜め上の展開に、私は優流と凛の顔を交互に見つめた。しかし、二人とも冗談を言ってはいないようだ。

「っ、でも……御堂さんにご迷惑がかかってしまいますし」

「あら、お兄ちゃんの職場も百貨店の近くだし大丈夫よ。二人とも仕事終わる時間もほとんど同じみたいだし」

 凛の言葉に、私は内心首を傾げる。百貨店の周りには高級ホテルや美術館、そして飲食店などはあるものの、大企業のビルはあまりないと思ったのだ。鉄道会社勤務かとも考えたが、どうにも優流の雰囲気には合わないような気もする。

「その……失礼ですが、御堂さんの勤め先というのは?」

「裁判所です」

「裁判……え?」

「ふふっ、お兄ちゃん、こんなおっかない顔してるけど、裁判官なの。品行方正なのは、私が保証するわ。とりあえず、一回試してみたら?」

 そう言って、凛は意味ありげに微笑んだのだった。
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