怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
「とは言ってもな。たまに失敗もあるから気をつけてください」
「?」
「もう、お兄ちゃんってば」
失敗とは?と聞こうか一瞬迷ったが、私が疑問を口にすることはなかった。何となく、優流とはまだ心の距離が遠く感じられたからだ。
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オムライスを食べ終えて食後の紅茶が来たところで、凛は口を開いた。
「そう言えば、高階さんって家はどの辺なの? ご実家?」
「一人暮らしで、町川のほうになります」
「町川? お兄ちゃんちの近くじゃない?」
「え?」
「町川駅のショッピングモールの近くにグレーのマンションあるでしょう? お兄ちゃん、そこに住んでるの」
「ええええ!?」
私が住んでるのは、八階建てのごくありふれたマンションだ。そのすぐ近所に高層マンションがあるのだが、どうやら優流はそこに住んでいるらしい。
「えっと、私、その近くにあるオレンジ色のマンションに住んでるんです」
「あそこでしたか。奇遇ですね」
「は、はい……」
あのマンションって、前調べたら家賃かなり高かったのに……優流さんって何者?
余計な勘ぐりをしていると、凛は思いもよらぬ提案をしてきたのだった。