怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
「じゃあ行きと帰り、お兄ちゃんとどんなことを話してるの? 二人で過ごす時間が、だいぶあると思うんだけど」

「どんなことと言われても……その、天気の話題とか、百貨店で開かれるイベントの話とか……でしょうか」

 正直、パーティーに参加してからも、優流との距離感は変わらない。偽の交際相手ということを除けば、互いに「凛を介した知人」という関係性を崩そうとはしないのだ。

「そっか。だったら、お兄ちゃんのことで、何か知りたいことってある?」

「え……?」

「お兄ちゃんって、見ての通り堅物だし、特殊な職業だし……どこまで突っ込んで聞いてもいいのか迷うでしょう?」

 実は、凛の言う通りだった。

 裁判官という仕事柄、守秘義務や規則などがあるに違いない。そう思うと、なかなか疑問を口にするのは躊躇ってしまうのだ。

「私が知ってることなら、何でも答えるわよ?」

「うーん……」

 とはいえ、いきなり言われても、なかなか質問は思い浮かばないものだ。

「じゃあ……簡単なプロフィールとご経歴を教えてください」

 迷った挙句、私は就職面接の面接官のようなひと言を口にしていた。
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