怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
 シャク、シャク、シャク……。

 私がフライを口に運ぶと、優流も頼んでいたカニクリームコロッケを食べ始めた。

 二人とも揚げ物を頼んだこともあり、サクサクの衣を咀嚼する音だけがテーブルに響く。ちょうどお昼の時間帯のため、周囲は他の客たちで賑わっているものの、自分の周りだけはやけに静かに感じた。

「……その、高階さん」

「は、はい……?」

「凛のやつが自分を都合良く頼ってくるのは昔からなので、気にしないでください。良く言えば甘え上手、悪く言えば人を使うのが上手いんです、あいつは」

 苛立ったというよりも、若干呆れたように優流は言った。

 奢るのを断らないあたり、彼も凛のことを憎からず思っているに違いない。実際、凛の優流に対する甘え方は嫌味がないのだ。愛嬌のある人とは、彼女のような人のことを言うのだろう。

「ただ……この前、高階さんに俺のことを紹介しておいたと凛に言われまして」

「……っ!?」

「あいつ、何か変なことを喋ってませんでしたか?」

 どことなく尋問に近い口調で、優流は言った。

「っ、いえ……っ、たしかに御堂さんのことについて少しお聞きしましたけれども、趣味とか誕生日とか、そういう内容だけしたので……」

 実際、優流の年収だとか女性遍歴だとか、そういった個人的なことは一切聞いていない。だから私は、慌てて首を横に振った。
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