怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
「良かったら、ひとつ食べてみませんか?」
私の心を見透かしたかのように、優流は言った。
「っ、いっ、いいえ! 四つのうちのひとついただくなんて、申し訳ないです。御堂さんはこれから仕事もあるのに、お腹空いちゃいますよ!」
「だったら、魚のフライとひとつずつの交換にしますか?」
白身魚のフライも、まだ二つ残っている。それを見て、優流は提案してくれたのである。
これが、初めて会った日ならば断っていただろう。しかし私は、即座に頷いていた。
「じゃあ……交換で、お願いします」
「そうしましょうか。そのままフォークで取ってもらって大丈夫ですよ」
優流に皿を差し出され、私はコロッケをひとつフォークで刺して、自分の皿に乗せる。そして優流も、私の皿からフライをひとつ持って行った。
「っ、その……コロッケよりフライのほうがひと回りちっちゃいので、ポテトもおひとつどうぞ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
貝殻のポテトが彼の皿に乗ったところで、私はカニクリームコロッケをひと口齧った。
サクッ。
「……っ!」
口に入れた瞬間、衣の中から柔らかいクリームが零れ出る。お弁当に入れる冷凍食品のそれとは違い、カニの身もしっかり入っているようだ。
正直、カニクリームコロッケを食べてカニの味を感じたのは、これが初めてかもしれない。