怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
「え?」

 想定外の優流の言葉に、私はつい聞き返してしまった。

「……っ、いえ。喫茶店で食べてみたい期間限定メニューがあったので、帰りに行ってみたんです。それで、ちょうどこの時間になったので……だったら、一緒に帰りたいなと」

「そ、そうだったんですね」

 そうよね。私と帰りたいから待っていてくれたなんて……ありえないわ。

 優流は偶然時間が合ったから迎えに来た……ということに安堵したものの、正直、ガッカリしたのも事実だ。自分のわがままさに、私は内心ため息を吐いた。

「ちなみに、期間限定メニューって、何を食べたんですか?」

「初夏のフルーツパフェで、甘夏と八朔が入ってるんですけど……っ」

 そこまで言って、なぜか優流は黙ってしまった。口元に手を当てて、あからさまに「しまった」という表情になっている。

「どうしました?」

「いえ。男ひとりでパフェ食べに行くって、よく考えたら……変ですよね」

 たしかに、優流がパフェを食べに行ったのは少し意外ではある。しかし、そのことに嫌悪感はなかった。

「うーんと……甘いもの好きな男性って、割といるので、変ではないと思います」

「え?」

「私、学生時代に少しお高めの喫茶店でアルバイトしてたんですけど、そこのお店、コーヒー一杯とアフォガートの値段が同じなんです。だから、男性でも『値段が一緒ならアイスが食べたい!』って言ってアフォガートを頼む方、たくさんいましたもん」

「……っ」

「ちなみにですけど、色んなお店のスイーツ食べに行ったりしてるんですか? 私も友達とアフターヌーンティーとか行くの、好きなんです」
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