怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
 家の中は玄関からリビングに至るまで整理整頓されており、置かれているものが少ないこともあり、モデルルームみたいだ。

 しかし、ここで優流が生活していると考えると、妙にドキドキしてしまう自分がいた。

「コーヒーか紅茶か……あとは野菜ジュースならありますけど、どれが良いですか?」

「ありがとうございます、じゃあ……紅茶をお願いします」

 私をリビングのソファに通したあと、優流はキッチンへと歩いていった。彼がいなくなったタイミングで、私はバッグから化粧品一式を入れたバニティケースを取り出す。

 バニティケースのファスナーを開けて、私は中身を念のため確認した。

 よし、スキンケア用品から仕上げのパウダーまで、全部そろってるわね。

 持ってきたファンデーションブラシの毛並みが乱れてないかチェックしていると、優流がペットボトルの紅茶と小袋入りのお菓子を持ってリビングにやって来た。ファンデーションを塗ったり手元を動かしていくので、零れないように蓋付きの飲み物を持ってきてくれたようだ。

「お待たせしました」

「い、いえ……ありがとうございます」

 テーブルを挟んで、私たちはソファに座って向かい合う。彼のいない間にテーブルに化粧品を並べておいたため、準備は万端だ。

「それでは、よろしくお願いします」

「っ、はい、お願いします」

 互いに会釈したあと、優流は着ていた長袖のパーカーを脱ぎ始めた。
< 72 / 120 >

この作品をシェア

pagetop