怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
 しかし、本題はここからだ。私は先程選んだ三色のファンデーションを、下地の上から順番に塗っていった。

「この中だと、真ん中の色が一番馴染んで見えますけど……いかがですか?」

「そうですね、これが一番自然に見えるので、真ん中の色でお願いします」

「ふふっ、そうしましょうか。じゃあ、真ん中の色のファンデーションで仕上げていきますね」

 私はファンデーションをスポンジにとって、痣全体をカバーするようにぽんぽんと塗っていく。

「ゴシゴシ擦るというよりは、ポンポンと叩き込むような感覚でファンデーションを乗せていくと、肌にしっかり密着します。スポンジがない場合は、手のひらにとって体温で温めてからゆっくり伸ばすと、綺麗に塗れるのでお勧めです」

 最後に余分なファンデーションをティッシュオフしてから、ベタつき防止のためにフェイスパウダーを軽く乗せる。すると、赤紫色の痣は忽然と姿を消したのだった。

「はい、完成です」

 私がそう言うと、優流は痣の消えた腕を見て目を瞬かせていた。どうやら、ファンデーションのお試しは大成功のようだ。
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