怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
 私が用意したのは、細長いチューブに入った、グリーンのコントロールカラー。今日はボディ用のファンデーション以外にも、化粧下地やパウダーなど、あらゆる自社製品を持ってきていたのだ。

「ファンデーションの前に、先にグリーンの化粧下地を塗っていきますね」

「肌色ではなく……緑色を塗るのですか?」

 下準備として痣のある箇所に化粧水をコットンで塗っていると、優流はミント色のチューブに目を向けて呟いた。

「そうなんです。グリーンは赤みを打ち消す効果があるので、より自然か仕上がりになると思います。ちなみにこれは、ニキビや肌荒れなどの赤みを隠すのによく使いますね」

「なるほど……ちなみに、こういう変わった色の下地は、緑以外にもあるんですか?」

「もちろん、たくさんありますよ。例えば、透明感を出すための青や、血色感を足すオレンジとか……最近は、どちらもできる紫が人気ですね」

 会話をしながらも、私は彼の痣にコントロールカラーを塗り伸ばしていく。がっしりとしていて血管の浮き出た腕は、男性的でとても魅力的だ。

「ほら。今の時点でも、塗る前とかなり違うでしょう?」

「……凄い」

 コントロールカラーを塗ったことにより、痣の赤みはだいぶ隠れたのだった。
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