月とスッポン ありのままは難しい
昔ながらの民家のような建物を横切り、小道を進む。
小道を抜け開けたと思えば、一段と立派な歌碑が目に入る。
【天智天皇】と書かれていれば、立派なことも納得だ。
「《「秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ」
秋の田のほとりに立てられた仮の小屋にいると、屋根を葺いた苫の網目が粗いので、私の袖は夜露に濡れ続けています。
という意味で、天智天皇が散歩をしていると、草花にかかった夜露を目にし同じように、夜露に濡れているであろう農民に思いを馳せ、この和歌を詠んだと言われています。
最上位に立つ天皇が下の人々を思いやる優しい気持ちが表れた歌です》」
「よく知ってますね」
「古文や漢文は試験に出題されることが多いので」
「未だに覚えてるだけで凄い」
「見て読んで思い出しただけで、突然言われても忘れてますよ」
恥ずかしそうに苦笑いをする大河が可愛らしく思う。
「古文・漢文なんて意味不明。
漢文が得意とかだったら、今頃中国語ペラペラですよ」
「漢文が出来ても現代の中国語には通用しませんけどね」
「マジっすか?」
「マジです。《多少は文法や語彙の歴史的背景などを理解する上では役立ちますが、基本的には別物と考えた方が正しい気がします。
古文・漢文を勉強するのは、その時代の人間や社会、自然等に対する捉え方や感じ方を理解し、その理解を深め思考力や想像力が培う事が目的ですからね》」
「なんだそれ。そう言うことは先に言ってほしいよね」
「習う前に説明されませんでしたか?」
「記憶にございません」
「習えば自然とわかるものだとは思いますが」
よくわからないことを当たり前のように言う大河は可愛くない。