月とスッポン      ありのままは難しい

勉強が出来る人間と出来ない人間の違いを感じつつ、近江勧学館の前に立つ。

「ここだ」

スマホを構えれば、すっと横から大河が割り込んでくる。

邪魔と言うべきか、そのまま無視をして移すべきか?

そうこれは記念で、今を切り取る記憶の断面で
色々な言い訳を考えながら、シャッターを押す。

撮られるとは思っていなかったと驚いた顔の大河が映っている。
なんだか思い出ができたようで嬉しい。

「見て、受ける」

映った大河を見せながら、勧学館へと入っていく。

ロビーに引かれた畳の上に並ぶ百人一首。
並ぶ巨大な百人一首。

百人一首一色の館内に入れば、自然と背筋が伸びた気がした。

ゆっくりと見て回る。
ふと大河に目を向けると畳に手をつけて百人一首を読んでいるようだった。

それは映像で見た大会の選手のようで思わず写真に収める。
写真音に顔をあげる大河。

「写真を撮られるのはあまり好きではないのですが」

不服そうだ。

「大丈夫です。後で消すので」
「カルタをですか?それとも」
「大河さんをです」

驚いた顔の大河を放置して、巨大百人一首パネルから【ちはらふゆ】を探す。

「トリミングですか?」
「トリミングっていうよりもアプリ機能です。そんな難しい事はしていないですよ」

「でしたら、撮影する際私を邪険にする必要はなかったのではないですか?」
「気づいちゃいました?」

【ちはらふゆ】を大河に持たせて写真を撮る。

「悪意を感じます」
「大丈夫です。悪意しかありませんから」
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