月とスッポン      ありのままは難しい

「その時知り合ったイギリス人が1300年台から続く子爵家である事を鼻にかけた本当に感じの悪い少年で、自分が次期当主だと何かとかけいう子がいたんです」
「それはそれは」

登ってきた階段をゆっくりと降りていく。大津の街中に、ボートレース場なんてあるんだと別の事を考えながら聞く。

「彼、次男なんですけどね」
「次期当主ですらない」

思わず突っ込んでしまった。

「そうなんです。私は創業して100年も満たない資本金が1700億、従業員が17万ほどの歴史の浅い会社なので」
「嫌味ですか?」

「普段は思った事もないのですが、彼と話していると言いたくなったんです」
「言ったの?」

「君みたいに歴史を背負ってはいないので尊敬するとは言いました」
「言ったんかい」

「えぇ。でも、そのあとが面白かったんです。
一緒に行動していた2人が、
「会社を継ぐっていうだけで凄い。祖父の家は
718年に創業した旅館を経営しているんだけど、よっぽどのことがない限り僕の所には回ってこない」
「回ってくる可能性を考慮している君もすごい。僕なんて、母方の家系が580年ぐらいに始まったされる華道の家元なんだけど、才能が全ての世界だからね。
万が一にも回ってこないから気楽なものだよ」
と彼の自慢を軽く超えてしまってね」
「何それ!マジでウケる。700年、すげーだろって言っていたら、1000年越えって」

「確かにあれは笑えました」
「大河さんが言い返すなんて意外」
「長く滞在するわけではないので穏便に過ごそうと思っていたんですけどね。
最後まで変わらない彼を見ていたら我慢ができなくなってしまって。私も若かったのだと思います」
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