月とスッポン ありのままは難しい
「これで終わりではありません。さぁ、登りますよ。紫式部に会いに行きましょう」
子供のようにニカっと笑う大河に手を引かれ、紫式部の間まで連れてこられた。
「狭いですね」
「でも、窓を開けた状態なら後ろの狭さなんて気にならないんじゃないですか?」
「ここから外を眺めながら、源氏物語を考えていたのでしょう」
「明日から仕事かぁ。やだなぁ、もう一泊しようかなって思ってたかもしれませんよ」
「戻って気を使うより、ここで源氏物語を書いていた方がマシとかですか?」
「でも戻った方がネタがあるしなぁとか?」
「帰ったら報告書が上がってるはずだから確認しないととか」
「週末宴会があるから準備が面倒だとか」
「会食の相手が仕事とは全く関係ない話をする人だから疲れるとか」
テンポ良く紫式部の妄想に自分の愚痴をのせていく。
石山を横目に階段を登っていく。
階段の途中にある祠の前で立ち止まれば
「《三十八所権現社ですね。
こちらも淀殿による慶長期の境内復興の際に石山寺の鎮守社として創建され、明治時代以前は社の直下にある蓮如堂が拝殿の役割を果たしていたそうです。
日本古来の神々と初代 神武天皇から38代 天智天皇までの歴代天皇を祀ることから、一間の間口が通常より広いのが特徴だそうですよ》」
「これも淀様が」