月とスッポン      ありのままは難しい
『初っ端から、大河の講義は』
なんて思っているうちに、比叡山延暦東塔に到着する。

運転しやすい靴から歩きやすい靴へと履き替える。
コート代わりのシャツワンピースを羽織り、少しの肌寒さ対策、日焼け対策を万全にスマホホルダーを持てば完璧。

だが、水分補給のペットボトルの事まで考えてなかった。
手で持てばいいかと手を伸ばせば、大河のサコッシュへと収納されていく。

「喉が渇いたらいつでも言って下さい」

それぐらいとは思ったが、「さぁ、全制覇しますよ」と意気込み歩き出す大河に『それぐらい持たさせもいいか』と思い直した。

「もちろん国宝殿も行きますよね」

拝観受付所を潜り、坂を登っていく。
道横にある延暦寺の絵看板を見ながらゆっくりと歩いていれば

「よそ見をしながら歩くのは危ないですよ」と大河に手を繋がれた。
「子供じゃないんだから」と言いつつも、坂道に並ぶ絵看板を見ながら歩けばつまづきそうになった。

「《幼少期から聡明で、7歳で家塾で仏教だけでなく医学なども学びますが、このときには仏道を志し、12歳のときには近江国分寺の行表法師のところで、佛書を学びました。
13歳のとき、この行表和尚から、一乗の教えに帰するべきことを教わり、14歳で得度とくどを受け、正式に行表の弟子となり【最澄】と名付けられます。
15歳で国分寺の欠員を補い、国分寺の僧となりました。》そして19」
「19歳で東大寺。ってさっき聞いたし、書いてあるし」

さりげなく大河は絵看板を見えない様に一歩前に出る。

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