月とスッポン      ありのままは難しい
東塔

車を止め、準備を整えてから見た目以上に急な坂道を降りながら、西塔の中に入っていく。

東塔エリアに比べて、人が少なく、木漏れ日が気持ちがいい。
坂を降り終わると案内板に、上へ登るか下に下がるかを問われる。

「下に迎えと西塔の本堂にあたる転法輪堂が上に10分ほど登れば、最澄が眠る浄土院があります」
「往復20分で見て30分コースですね。気力と体力がある内に登ってしまいましょう」
「ですね」

緩やかに見えるだけの傾斜を登っていく。

「こういう道を歩いていると、比叡山だけあって山だって事を思い知らされますね」
「舗装されてるだけでもありがたいと感じざる得ませんね。
《今向かっている浄土院は延暦寺山内では最も清浄荘厳な聖域で、比叡山を開かれた伝教大師最澄上人の御廟でもあります》」

「聖域。サンクチュアリィ。いい響きです」
「それと同時に地獄でもあるそうですよ」
「相容れなくないですか?」
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