月とスッポン      ありのままは難しい

「地獄というよりも、心身ともに極限まで追い詰める修行を地獄だと表現したのだと思います」
「なるほど。ものはいいようってやつですね」

人が素直に納得しているのに、よくわかりましたねと微笑むでない!

「《浄土院で行われている修行を【十二年籠山行】と言います。浄土院に籠り、十二年間伝教大師・最澄に仕える行で、その間浄土院から一切外に出ることはないといわれます》」
「12年間も」

「《午前3時半に起床してすぐの朝のお勤めをし、最澄と自身の朝食を準備し、その後は読経と祈祷。午後になると座禅と写経、さらに落ち葉一つ、塵一つ許されない清掃をします。
これが地獄の由縁です。また、朝10時以降は何も食べず、午後10時には就寝する。それを12年間1人で行います》」
「1人で。いけるか?」

「《一度【十二年籠山行】に入れば、12年もの間、自身の病気はもちろん、たとえ肉親が亡くなったとしても中断は許されません。例外は、死か出家をやめる かのいずれかです》」
「なら、無理。頑張って1週間で海に会いた過ぎてリタイアだなぁ」
「私も茜に会いたくなってすぐにやめてしてしまうと思います」

何かほざいているが聞き流そう。
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