月とスッポン      ありのままは難しい


クスッと笑いながらも、講義は続く。


「《【半行半坐三昧】には、【方等三昧】と【法華三昧】があり、比叡山では【法華三昧】が行なわれています。
五体投地や法華経の読誦からなり、歩いたり坐ったりしながら行をすることからこの名があります。
【
非行非坐三昧】は、形式や日時を問わず、日常において心のはたらきの起こるときにその心を観察するもので、日常生活すべてが修行の場と言うことだそうです》」

「三昧って楽しいイメージなんですけどね」
「三昧は一つのことに熱中して他のことに心が向かないと言う意味があります」

「贅沢三昧、ゲーム三昧、すしざんまい」
「最後の意味はわかりませんが、一つのことに夢中になって他のことをかえりみないと言う意味合いでは楽しいかもしれません」
「他の事を捨てて、一つのことに集中する。それも三昧ですか」

背の高い大河が、渡り廊下を潜る。

頭をぶつけたら面白いのにとじっと見ていれば、「邪念だらけですね」と苦笑いされた。

「じゃぁ、ちょっくら常行三昧でも」

と軽口を叩きながらも、釈迦堂へと向かう長い階段を降りていく。

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