月とスッポン      ありのままは難しい
近江神社
枕元で鳴るスマホに手を伸ばす。
その勢いでふかふかの布団の中で大きく伸びをする。

「起きましたか?」

大河の声がする。そもそも私の布団はこんなにふかふかだったか?

もう一度伸びをすれば少しづつ覚醒していく。
そうだ。私は今、滋賀にいるんだった。
勢いよく布団を払い乗れければ、すでに支度を終えた大河が優雅にコーヒーを飲んでいる。

「おはようございます」

朝から爽やかで絵になるなぁ、おい。

思わず正座をし「おはようございます」と頭を布団につけた。
やばい。そのまま寝そうだ。

「寝てはダメですよ。さぁ、顔を洗って目を覚まして来てください。朝食を食べて、出発しますよ」

時間を確認する。
「寝過ぎた!」

2倍速で準備を終えた私と大河の前に小鉢が並ぶ和朝食が置かれている。

「いただきます」と手を合わせて、今日のエネルギーチャージ。

「スタートは近江神社からでしたよね」

ナビをセットせず走り出した人間が言うセリフ何だろうか?
目的地のわからずに走り出したはずがない。絶対に分かっていて言っている。

「近江神社行って、三井寺回って、時間があったら石山寺にも行きたいですね」

「休憩なしで6時間なので、3時、遅くても4時には滋賀を出発したいとは思ってますけどね」

すれ違う出勤ラッシュと思われる車と街並みを眺めながら答える。

「三井寺を見終えた時間で、その後の予定を考えましょうね」
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