月とスッポン      ありのままは難しい

街並みの奥に森が見える。
線路を越えれば、鳥居が近江神社はここだと教えてくれる。
いよいよだとワクワクしてくる。

「鳥居を撮りたいので、下ろしてください。私は参道を歩いて向かいます」

とお願いする。
にも関わらず車は鳥居の横道に入って行く。

「おい!って無視するな」

思わずきつくツッコむ。

「却下です。車は急に止まれないので、帰りに鳥居の前で止まって写真を撮りましょうね」

子供に言い聞かせるように言う大河を睨んで見るが、こちらを見ずとも私の行動をわかっていると微笑む大河が憎らしい。

「さぁ、到着です」

小道を抜けた先に広がる駐車場。
少しでも日がけになりそうな場所に車を停める。

少しでも近くに、少しでも出やすい場所にと車を止める私とは大違いだ。
こういう所に性格が出るのだろう。

車を降りて、日焼け止めと虫除けのスプレーを順番に吹きかけていく。
ついでに大河にも吹きかけてあげる。
私はとても優しい子なのだ。

むせている大河を横目に、腕を大きく振りながら、行く揚々と歩き出す。

「《近江神宮は、天智天皇が近江大津宮の跡地に1940年 昭和15年に創立された神社です》」
「昭和?1900年代?創立して100年経ってないんだ」

様々な形の石に彫られた文字。読みとく事は出来ないけれど、百人一首の歌に違いない。

そんな事を思うながら見ていたが、近江神社が思っていた以上に新しい事に思わず反応してしまった。

振り向けば、予想通りの反応だったらしく満足そうに微笑む大河がいた。
< 98 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop