月とスッポン      ありのままは難しい

「《1908年 明治41年の大津市制施行10周年を契機として、天智天皇をゆかりの地である大津宮跡に祀ろうという運動が起こり、1938年 昭和13年に昭和天皇の勅旨によって官幣大社【近江神宮】の創建が決定され直ちに社殿の造営が始められ、1940年 昭和15年11月7日に鎮座されました》」
「計画から実行までは時間がかかってる割には、決まったら2年って早くないですか?」

背の高い木々の囲まれた先ほど写真に撮り損ねた鳥居が見える。少しずつ見えてくる赤い楼門にドキドキする予定だったのに。

「あれは二の鳥居ですからね。ちなみに一の鳥居から歩いても、直線ではないので楼門は見えません」

人の心を読んで夢を壊さないでほしいのだが。

「見えなかったら、見えなかったで良いんです」

二の鳥居から手水舎に視線を戻しながら、負け惜しみを吐き捨てる。

「《1940年は皇紀、初代天皇である神武天皇が即位したとされる年から2600年に当たる年に合わせたかったのだと思います。
天皇陵の整備や奉祝の行事が行われたり、オリンピックや万博などが行われたりと国内外で盛大に祝う予定だったようです。
ただ当時は日中戦争の戦時下であり、物資不足の影響もあり、実際にはオリンピックも万博も開催されず国内だけで簡素化されながらも行われたそうです》」
「前から言ってたから実現したって事?」

「そうですね。《30年の間に明確なプランを立てていたからこそかもしれません。
第一次世界大戦後は大戦景気となり日本は豊かでしたが、日中戦争が始り、第二次世界大戦に突入する頃には国家予算の大半が軍事費に使用されています。
なので、少しでも遅かったのならば必要ないと軍部から却下されていたでしょうね》」
「これも時の運というやつですね」
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