あの夏、君と最初で最後の恋をした

「やっと着いた……」

疲れからかひとつのため息と一緒に、ぽつりと言葉がこぼれた。

飛行機と電車を乗り継ぎやっと到着したママの実家のある四国。

キャリーケースをガラガラと引きながらバスに乗り込む。

窓から見える景色は緑がいっぱいで高いビルばかりの都会とは全く違う。

久しぶりに胸が弾む。
こんなにも楽しみで嬉しくて胸が弾むなんて、
あの日から一度もなかった。

去年は来なかったから2年ぶりのママの実家。
お爺ちゃんとお婆ちゃんが亡くなった後は地元の不動産会社に手入れを頼んでいるからか、荒れてなく綺麗な状態を保っている。

高鳴る胸を押さえ、深呼吸してから玄関のドアを開ける。

「いらっしゃい、
なんて、僕が言うのはおかしいかな?」

ドアを開けて目に飛び込んできたのは、
颯太の優しい笑顔。
耳に入るのは颯太の優しい声。

「ただいま、颯太」

そう言って私はキャリーケースを手離し颯太に飛びついた。

「移動だけで疲れたよね、お疲れ様。
お茶にしようか」

私が放ったらかしたキャリーケースを持って、空いてる手は私に差し出してくれる颯太。

その手を取ると暖かくて、
それは昔から変わらない颯太の体温で、
私は何だか泣きたくなってきた。


「僕が言うのもなんだけど、おじさんもおばさんも友花がひとりでこっちで過ごす事、よく許してくれたよね」

冷たい麦茶を差し出しながらそう聞いてくる颯太。
暑い中の長い移動で喉もカラカラの私は渡された麦茶を一気に飲み干して口を開く。

「私もびっくりしちゃった。
自分で伝えながらも許してくれないよなーって思ったもん」

そう、颯太が戻ってきたあの日の夜、
私はパパとママに紬ちゃんが戻ってくる前に自分ひとりでママの実家で過ごしたいとお願いした。

当然、2人は反対した。
まだ中学生の子どもが1年に一度しか訪れないような場所でひとりで過ごすなんて、そんな事させられない、
物騒だ、危険だ、それに買い物や食事や家事はどうするんだ、等々それはそれは大反対された。

そりゃそうだよね、
いくら治安の良い田舎とは言え、こんなにも物騒な世の中、反対されるのは当たり前だ。

でもここで諦めたら颯太と一緒に過ごせない、
私は必死でパパとママを説得した。

ずっと渋い顔をしていた2人だったけど、
ひとりでゆっくり考えたい、
今はとにかくひとりで過ごす時間がほしい、
絶対に心配かけるような事はしない、
家事も頑張る、
勉強もサボらない、
たからお願いしますと頭を下げてお願いしたら、
渋い顔は崩さないままだけれど、了承してくれた。

ただし、必ず朝と夜には電話する事、
何かあったらすぐに帰る事を条件に出された。

それ位全然いい。
ちゃんと守る。
それさえ守れば颯太と過ごせるんだから。

「おじさんとおばさんに心配かけないように僕も頑張るよ」

「私も気をつけるね、
パパとママには散々心配かけちゃったし」

「そうだね、
……僕が、頑張らなきゃね」

「え?
なあに?」

「……いや、何でもないよ。
休んだら早速買い出しにいこうか」

「うん!」

颯太と過ごせる事が嬉しくて、
颯太の言葉が聞こえなかった事を気にしなかった。


ねえ颯太、
颯太はこの時から、
ううん、
私の前に現れた時から、

私との二度目の別れを覚悟していたんだね。

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