あの夏、君と最初で最後の恋をした

買い物が終わり家に着いた時にはもう辺りは夕焼けで赤く染まっていた。

虫の鳴き声が響く中、2人でキッチンに立ちカレーを作る。
お米を洗ったり野菜を切ったり炒めたり、
そんな何でもない事も颯太と2人なら楽しい。

「私ね、こうやって颯太と一緒に何かする時間が好きなの」


颯太が切った野菜とお肉を炒めながらそうぽつりと呟いた私を、
颯太が眉を下げ、優しく微笑んで見てくる。

「でも友花、僕が何かしているのを見ているだけの方が多いんじゃないかな?」

「それも好き。
颯太が絵を描いたり本を読んだりしてるの見るの、昔から好きなんだもん」

「嬉しいけど、僕は友花が自分で頑張ってる姿を見るのが好きだよ。
ほら、友花昔から庭の花に水をあげるの日課でしょ?」

「え、うん。
そうだけど……」

「毎朝学校いく前に楽しそうに水やりしてるの見てたんだ。
いつも笑顔で花に声かけてて、見てる僕まで楽しくて嬉しかったよ」

「えー、見てたの?
やだ、何か恥ずかしいじゃん」

昔から日課の花の水やり。
元々は花が好きなママがしていたけれど、いつからか私がするようになった。

花は好きだし、声かけしたらそれに応えるかのように生き生きと咲くのが嬉しくて、
毎朝おはよう、とか綺麗に咲いてね、とか言いながら水やりしてた。

だけど、それを颯太に見られてたなんて知らなかった。

「恥ずかしい事なんてないよ、
毎日何かを続けるって実は凄く大変な事だよ。
それを楽しそうに続けてるんだから、凄い事だよ」

「そんな大袈裟な……」

「大袈裟なんかじゃないよ、
友花は凄い。
だって、そんな友花を見て僕は毎朝癒されてたんだから」

真っ直ぐに私を見てそう話す颯太。

それが何だかくすぐったくて、恥ずかしくて、
思わず目を反らした。




ねぇ颯太、
私はこの時、ただ恥ずかしくて、
だけど嬉しかった。

颯太が私を見ていてくれた事が、
颯太が私を褒めてくれた事が、
ただ嬉しかったの。

だけどこの時から、
颯太は私に教えてくれていたんだね。

私が、ひとりでも何かをやり遂げていた事を。

私が、
ひとりでも出来るって事を。

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