あの夏、君と最初で最後の恋をした

朝ご飯を作ってる時も、食べてる時も
いつもと変わらない颯太だった。

優しくて穏やかで、柔らかく笑ういつもの颯太。

はじめて作った少し焦げて形も崩れた卵焼きも美味しいよ、って笑顔で食べてくれた。

……あの表情は、私の見間違いだったのかな?
なんて思う程、颯太はいつもの颯太で、
私はホッとしたけれど、やっぱり胸の奥底ではぎゅっとした痛みがまだ広がっていた。

「友花、買い物頼んでいいかな?」

洗い物をしながらそう聞いてきた颯太に、
私はすぐに返事出来なかった。

「え、でも私、この辺り頻繁に来る訳じゃないからひとりではヤダな……」

ママの生まれ育った街だし、小さい頃から年に1、2回は来てる場所だけど、
地元に比べたら土地勘はないから、外に出る時は必ず誰かと一緒が当たり前だった。

颯太だって私をひとりで出そうとはしなかった。
迷ったらいけないから、危ないから、
いつもそう言っていたのに……。

「僕はちょっとやらなきゃいけない事があるんだ。
だから友花がいってくれたら助かるんだけどな」

少し眉を下げて困ったように笑う颯太。

そうだ、颯太はやりたい事をやりに来たんだ。
なのに戻ってきてから颯太が何かやりたい事を主張したりなんて一切なかった。

颯太がやりたい事を私も手伝おう、
そう思っていたのに、
私は自分のやりたい事ばかりだった。

自分が恥ずかしい。

「分かった。
でも颯太のやりたい事って何?
私に何か出来る事があるなら言って。
何でもするから!」

「ありがとう、でも大丈夫だよ」

颯太の言葉に胸がまたチクチクと痛んだ。

私は颯太の役に立たないの?
という悲しみ、
そして、
やりたい事を全部やってしまったら、颯太はまた私から離れちゃうの、という不安が私を飲み込む。

怖くなって颯太の腕を掴む。

「どうしたの?」

そう聞く颯太はやっぱり優しく柔らかく笑っていて、
その笑顔が嬉しくて、
苦しくなった。




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