あの夏、君と最初で最後の恋をした

颯太と過ごす6日目の朝、
雲ひとつない真っ青な空が広がっている。

太陽の光が容赦なく降りそそぎリビングを明るく照らしている。

「おはよう、友花」

「おはよう、颯太」

リビングに入ると先に起きていた颯太が優しい笑顔でそう言ってくれる。

「いい天気だよ、これなら紬さんも予定通り明日来れるね」

「あ……、うん、そうだね」

颯太の言葉に胸がドクリと音をたてた。

「ねぇ颯太、紬ちゃんには何て……」

「朝ご飯にしようか、昨日は友花頑張ったし今日は僕が用意したよ」

私の言葉を遮り、そう言ってキッチンへと入っていく颯太に胸がざわざわする。

だけど颯太に悟られたくなくて、笑顔を作って颯太の隣に立つ。

「何作ったの?」

「フレンチトーストだよ。
友花好きでしょ?」

「うん、大好き!
メープルシロップいっぱいかけてね!」

「はいはい」

柔らかくて優しい颯太の笑顔が好き。
颯太の声が好き。
颯太の暖かい手のひらが好き。
私の名前を呼ぶ颯太が好き。

ずっとずっと、隣にいたい、
そう思える人は、颯太しかいない。


「今日は1日デートしよう」

「え……?」

フレンチトーストにスクランブルエッグ、カリカリに焼いたベーコン、サラダにスープ、そして冷たいカフェオレが並ぶテーブル。
他愛もないお喋りしながら食べていると、不意に颯太がそう言った。

「いい天気だし、友花がやりたい事をしよう。
街に買い物にいく?
それともまた海にいく?」

「え、いいの?
だって颯太、こっちに来てから朝は宿題しようとか買い物とかやる事済ませようって言ってたのに」 

「今日はいいんだ。
友花、どこかいきたい所ある?
何がしたい?」

急な提案に悩んでしまう。

海はいったし、どうしようかな……?

「……じゃあ、一緒に街に出て買い物してカフェにいきたい。
恋人らしい、普通のデートしたい」

「うん、そうしよう。
楽しみだね」

「うん!
それでね、夜は一緒に星を見るの。
颯太に星座とか教えてもらうの好きだから」

「分かった。
じゃあ食べたら準備しよう」

「うん!」

デート、
その言葉に浮かれた。

颯太が私と恋人としてデートしてくれる。
それが嬉しくて嬉しくて。

浮かれて気づけなかった。

あんなに胸がざわざわとして痛くて苦しかったのに。
ちゃんと、分かってたはずなのに。

颯太は、
やりたい事をやりに戻ってきたんだって。

その全てを叶えたら、
颯太がどうなるのか、

分かっていたはずなのに。








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