あの夏、君と最初で最後の恋をした
㊴
虫の鳴き声だけが響く中、
私はただ、颯太を見るしか出来ない。
「僕がいなくなってからの友花はまるで抜け殻のようで見ていられないほどだった」
何も言えない私に颯太は話を続ける。
「そんな友花を見ているしか出来なくて悔しかった。
泣いてる友花を抱きしめたいのに出来なくて。
悔しくて何より友花の泣いてるところを見るのが辛くて。
その原因は僕なのに」
そう話す颯太の顔は本当に辛そうで見ている私まで苦しくなってくる。
「このままじゃ駄目だと思った。
友花にはたくさん友花を心配して大切に思ってくれてる人がいるのに、友花はそんな人に気づかないほどに傷ついて苦しんで泣いてて。
……だから、僕は戻ってきたんだ。
友花がもう一度、前を向いて生きていけるように。
そして、もう大丈夫だって思えた」
颯太の言葉が何を意味するのか分かりたくないのに分かってしまって。
なのに言葉が出なくて、私は縋るように颯太の腕を掴む。
そんな私を、颯太はやっぱり優しい笑顔で見て言葉を続ける。
「友花は美也子さんのためにあんなに必死に頑張った。
人のために動けた。
指輪を見つけた時の友花の涙と笑顔を見た瞬間、
僕の役目は終わったって分かった」
「……そんな事、ない……!」
やっと出た言葉は震えて上手く話せなかった。
「元々、友花は人のために頑張れる優しい女の子だよ。
いつも明るくて、甘えん坊で、笑顔でまわりに元気をくれた。
僕はいつも友花に元気をもらってた。
僕は、そんな友花が大好きだよ」
「私は……!
颯太がいないと笑えない!
颯太がいなきゃ、駄目なの!
颯太がいなきゃ……!」
涙が流れては落ちていく。
嗚咽混じりに泣く事しか出来なくて、
上手く話せない。
そんな私を颯太は優しく包み込む様に抱きしめてくれる。
「大丈夫だよ、友花はちゃんと笑える。
僕がいなくても友花は幸せになれる」
「そんなの、無理……!」
無理だよ、颯太がいなきゃ私、全部駄目だよ。
「颯太がいなきゃ無理なの……!
もう、颯太がいないのは嫌!
颯太がいなきゃ私幸せになんかなれない!」
「友花……」
「ヤダ!
もう居なくならないで!
ずっとそばにいて!
颯太がいなきゃ……」
「友花!」
颯太が大きな声で私の名前を呼ぶ。
その声に驚いて颯太を見ると、
颯太の目に涙が浮かんでいるのが分かった。
「僕は友花に幸せになってほしいんだ」
「……そんなの、無理だよ。
颯太がいなきゃ……」
「友花はこれからたくさんの人に出会うよ。
そんなこれから出会う人の中に、心から好きになる人もきっと現れる」
「そんな事絶対にない!
私には颯太だけだもん!」
「今はそう思っても、これから未来がある友花にはそんな出会いが必ずあるよ。
僕は友花に幸せになってほしい。
僕がいない世界でも、たくさんの人と出会って、たくさんの経験をして、そしていつか本当に好きな人と出会って。
その時は僕の事は忘れて幸せになってほしい」
「颯太を忘れるなんて出来る訳ない!」
何でそんな酷い事を言うのか分からなかった。
颯太を忘れるなんて出来る訳ないじゃない。
ずっとずっと、一緒にいたんだから。
好きで好きで、大好きなんだから。
「気づかない?友花」
「え……?」
「僕が死んでからのこの1年で僕と友花、身長の差が縮まっている事」
颯太の言葉に、時間が止まった気がした。
胸がドクリと大きな音を立てた。
「僕達、小さい頃はあまり身長差なかったけど、中学に入ってから僕の方が友花より身長高くなったよね。
こうして抱きしめると、いつも友花の頭が僕の胸位の位置にあった」
胸がドクドクと痛い。
上手く息が出来ない。
「だけど今は友花の頭が僕の顎近くにある。
この1年で友花は背が伸びたんだ。
だけど僕の背は変わらない。
……友花は生きていて、
僕はもう死んでいるから」
「颯、太……」
「これが現実なんだ。
僕と友花は、もう生きる世界が違うんだよ」
……気づいてた。
だけど、気づきたくなかった。
なのに、はっきりと颯太に言われてしまった。
もう、気づいてない振りは出来ない。
「やりたい事、全部やった。
後は友花が幸せに生きるのを、空から見守るだけだ」
……颯太のやりたい事、
もう一度戻ってきてくれた理由は、
全部、私のためだった――。
私はただ、颯太を見るしか出来ない。
「僕がいなくなってからの友花はまるで抜け殻のようで見ていられないほどだった」
何も言えない私に颯太は話を続ける。
「そんな友花を見ているしか出来なくて悔しかった。
泣いてる友花を抱きしめたいのに出来なくて。
悔しくて何より友花の泣いてるところを見るのが辛くて。
その原因は僕なのに」
そう話す颯太の顔は本当に辛そうで見ている私まで苦しくなってくる。
「このままじゃ駄目だと思った。
友花にはたくさん友花を心配して大切に思ってくれてる人がいるのに、友花はそんな人に気づかないほどに傷ついて苦しんで泣いてて。
……だから、僕は戻ってきたんだ。
友花がもう一度、前を向いて生きていけるように。
そして、もう大丈夫だって思えた」
颯太の言葉が何を意味するのか分かりたくないのに分かってしまって。
なのに言葉が出なくて、私は縋るように颯太の腕を掴む。
そんな私を、颯太はやっぱり優しい笑顔で見て言葉を続ける。
「友花は美也子さんのためにあんなに必死に頑張った。
人のために動けた。
指輪を見つけた時の友花の涙と笑顔を見た瞬間、
僕の役目は終わったって分かった」
「……そんな事、ない……!」
やっと出た言葉は震えて上手く話せなかった。
「元々、友花は人のために頑張れる優しい女の子だよ。
いつも明るくて、甘えん坊で、笑顔でまわりに元気をくれた。
僕はいつも友花に元気をもらってた。
僕は、そんな友花が大好きだよ」
「私は……!
颯太がいないと笑えない!
颯太がいなきゃ、駄目なの!
颯太がいなきゃ……!」
涙が流れては落ちていく。
嗚咽混じりに泣く事しか出来なくて、
上手く話せない。
そんな私を颯太は優しく包み込む様に抱きしめてくれる。
「大丈夫だよ、友花はちゃんと笑える。
僕がいなくても友花は幸せになれる」
「そんなの、無理……!」
無理だよ、颯太がいなきゃ私、全部駄目だよ。
「颯太がいなきゃ無理なの……!
もう、颯太がいないのは嫌!
颯太がいなきゃ私幸せになんかなれない!」
「友花……」
「ヤダ!
もう居なくならないで!
ずっとそばにいて!
颯太がいなきゃ……」
「友花!」
颯太が大きな声で私の名前を呼ぶ。
その声に驚いて颯太を見ると、
颯太の目に涙が浮かんでいるのが分かった。
「僕は友花に幸せになってほしいんだ」
「……そんなの、無理だよ。
颯太がいなきゃ……」
「友花はこれからたくさんの人に出会うよ。
そんなこれから出会う人の中に、心から好きになる人もきっと現れる」
「そんな事絶対にない!
私には颯太だけだもん!」
「今はそう思っても、これから未来がある友花にはそんな出会いが必ずあるよ。
僕は友花に幸せになってほしい。
僕がいない世界でも、たくさんの人と出会って、たくさんの経験をして、そしていつか本当に好きな人と出会って。
その時は僕の事は忘れて幸せになってほしい」
「颯太を忘れるなんて出来る訳ない!」
何でそんな酷い事を言うのか分からなかった。
颯太を忘れるなんて出来る訳ないじゃない。
ずっとずっと、一緒にいたんだから。
好きで好きで、大好きなんだから。
「気づかない?友花」
「え……?」
「僕が死んでからのこの1年で僕と友花、身長の差が縮まっている事」
颯太の言葉に、時間が止まった気がした。
胸がドクリと大きな音を立てた。
「僕達、小さい頃はあまり身長差なかったけど、中学に入ってから僕の方が友花より身長高くなったよね。
こうして抱きしめると、いつも友花の頭が僕の胸位の位置にあった」
胸がドクドクと痛い。
上手く息が出来ない。
「だけど今は友花の頭が僕の顎近くにある。
この1年で友花は背が伸びたんだ。
だけど僕の背は変わらない。
……友花は生きていて、
僕はもう死んでいるから」
「颯、太……」
「これが現実なんだ。
僕と友花は、もう生きる世界が違うんだよ」
……気づいてた。
だけど、気づきたくなかった。
なのに、はっきりと颯太に言われてしまった。
もう、気づいてない振りは出来ない。
「やりたい事、全部やった。
後は友花が幸せに生きるのを、空から見守るだけだ」
……颯太のやりたい事、
もう一度戻ってきてくれた理由は、
全部、私のためだった――。